静寂のなかに(「DOYU IWATE」2018年3月号)

喧騒、溢れかえる情報、絶え間ない変化の中で現代の私たちは生きています。自分だけの静かな時間をもつことが難しくなっています。

20世紀の現代音楽に多大な影響を与えた作曲家ジョン・ケージ(アメリカ人)は、自分の音楽活動を次のように表現しています。

「沈黙・静寂は、ざわめきが無い状態じゃなく、私の神経系と血液循環が無故意に機能していることだということが、私に聞こえた。私は、静寂が聴覚的なものじゃないことを発見した。静寂は、意識の変化、転換だ。私は、その静寂に自分の音楽を捧げた。私の音楽は、無故意なものを探求することだった」

様々な作品のなかで「静寂」をテーマにしているドイツの作家ヘルマン・ヘッセは次の名言を残しています。

「あなたの中に静寂があります。それは、あなたがいつでも引きこもることができて、自分自身であることができる神聖な場所です」

人間は社会的な生き物です。家族や友人、学校や職場の仲間、コミュニティなどの繋がりのなかで、様々な義務や課題を与えられ、苦しみや喜びを分かち合い、迷い、考え、決断…、と多くの人が「忙しく」生きています。

私も、南西ドイツの小都市で、育ち盛りの活発な子供が3人と日本人の妻の5人家族で、仕事では日本とドイツの繋ぎ役として、異なる2つの文化の間を行き来しながら(精神的にも地理的にも)、「忙しく」暮らしていますが、時々森や草原を散歩したり、プールや湖で泳いだり、夏の夜にベランダで夜景を眺めながら涼んだりしているときなどに、自分のなかにある「静寂」に引きこもれることがあります。

「静寂」のなかで、疲れが癒され力が蓄えられます。新しい発想が生まれたり、物事が整理され、迷いが断ち切れ、解決策が見えることもあります。生命の神秘、人生の意義について考えを巡らすこともできます。貴重な時間です。

岩手中小企業家同友会の会報「DOYU IWATE」に連載のコラムより

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