健康な省エネ建築(5) 調湿

建物内の湿気は、カビや躯体腐れを発生させる原因であり、しっかりとしたマネージメントができていないと、人間の健康被害や建物の損傷を生みます。

湿気は、空気中の水蒸気です。空気が含有することができる最大水蒸気量は、温度によって変わります。温度が高いほど、空気はより多くの水蒸気を含有することができます。例えば、気温が20度の時は、空気は1m3あたり、最大17.3gの水蒸気を含有できます。0度になると、それが4.8gになります。この最大値を飽和点といいます。この気温によって異なる飽和点を基準値にした湿度を「相対湿度」といいます。同じ水蒸気量でも、気温が低いほど相対湿度は高くなります。水蒸気の量が飽和点を越えると(相対湿度が100%を越えると)、余剰分が水滴になります。例えば冬場、建物内の暖かい空気が、外に移動する際に冷やされると、飽和点を超えた余剰水分が水滴になり、建築マテリアルに付着します。これが「結露」と呼ばれる現象です。

湿気(水蒸気)は熱と同様に移動します。移動の原則は、下記の3つがあります。

1)拡散

水蒸気は、外部からの力が働かなくとも、水蒸気圧(相対湿度)が高いところから低いところに移動し、平衡状態に近づいていきます。この現象を拡散といいます。これは気体と個体間でも起こります。

ただし個体には、水蒸気を透しやすいものと透しにくいものがあります。この性質は、

水蒸気拡散抵抗係数μ=空気の透湿率(kg/msPa)/個体の透湿率(kg/msPa)

で表されます。μ値が低いほと、その個体(建材)は水蒸気を透しやすいと言えます。例えば、麻や綿や羊毛のμ値は1-5 、木質繊維材や石膏ボードも5-10と低く、これらは水蒸気を透しやすい建材です。無垢の木材はμ値=40と空気の40倍の水蒸気拡散抵抗値あります。レンガは50-100、コンクリートは70-150あります。

湿った建材が、空気の流れがなくとも、時間が経つと乾いていく現象は、この拡散の法則に基づいています。

2)対流

空気は温度差によって流れが発生しますが、この空気の流れによって湿気は移動します。

代表的な例が、「隙間風」です。建物の気密性が低い箇所で起こります。隙間風(対流)は、拡散より遥かにたくさんの湿気を移動させます。例えば、暖かい室内の空気が、建物の隙間箇所での対流で外部に移動する際、建材の温度が低いと、相対湿度が高くなり、飽和点に達すると水滴となり、内部の建材を湿らせ、腐れ損傷の原因になります。また、寒い地域では、湿った内部建材が、冬場凍結することもあり、そうなるとひび割れが起こったり、氷によって湿気の拡散が遮断されてさらに水分が溜まり、さらなる損傷をもたらすこともあります。

3)毛管現象

水は、狭い隙間や細い管に、重力に逆らって引きつけられる(吸着し吸収される)性質を持っています。

多くの建材には微細な孔があり、建材の表面にある孔は外気に向けて開かれています。孔の直径が0.1mmより小さく、それらが管路で繋がっているものを「毛管」と呼び、毛管が豊富な多孔性のマテリアルほど、水分を吸着させ吸収する力が高くなります。毛管による湿気の移動は、基本的に拡散のそれより遥かに大きいです。

吸湿と放湿による調湿

室内の建材は、室内の相対湿度が高いときに、拡散と毛管現象に基づいて、室内空気から水蒸気を吸収し(=吸湿)、室内の相対湿度が低くなると、室内に向けて水蒸気を放出(=放湿)し、室内の湿度を調整(=調湿)する機能をもっています。基本的に、拡散抵抗係数が低く、毛管現象が起こりやすい多孔なマテリアルほど、その調湿機能は高くなります。下記は、フラウンホーファーIRB出版(2012年)の書物のなかの各マテリアルの吸湿性能です。室温21度の状態で、相対湿度を50%から80%に上げた際の、24時間後の吸湿度を示しています。伝統的なマテリアルである土や木が高い調湿機能を持っていることがわかります。

土(粘土質):         210 g/m2

トウヒ材(表面かんな仕上げ): 70 g/m2

土塗り壁(Illit-Semektit):    65g/m

気泡コンクリート :                   55g/m2

石灰-セメント塗り壁:                    45g/m2

石膏塗り壁:                                 35g/m2

コンクリート B25、レンガ:        25g/m2

湿気による建材のカビや腐れの問題は、断熱と気密に偏重した省エネ住宅や省エネリフォームの普及の発展段階で助長されてきました。

蓄熱性の低い断熱材の利用、透湿、調湿性能の異なるマテリアルの組み合わせ、気密、防湿シートやテープの使用、ヒートブリッチを起こす設計ミスや施工ミスから来ているものです。問題を解決するために、機械換気(強制換気)が導入されましたが、その使用がさらなる健康上のリスクも生み出しています。

解決策のヒントは、数百年、もしくは数千年実証されている伝統建築の中にあります。蓄熱と調湿に重きをおいたマテリアルの組み合わせです。気密テープもシートも使用することなく、機械換気も使用することなく、蓄熱と調湿性能の高いマテリアルの組み合わせで、現代に求められる断熱と気密性能、空気交換機能を達成している事例があります。

 

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