森の道

私が留学生として最初にドイツにやってきた20年以上前、自然が人に近い、特に森が近いと感じました。統計的には、ドイツは国土の3割が森林、日本は7割で、日本の方が遥かに多いですが、ドイツでは、人が「気軽」に「安心」して入って行けて、「快適」に「安全」に歩いたり、ジョギングしたり、サイクリングしたりできる森の道が整備されていることが、そういう気持ちを抱かせたのだと思います。貧乏な学生でしたので、移動は徒歩か自転車、よく近くの森を歩いたりサイクリングしたりしました。また、木陰や林縁の日向に座って本を読んだり、宿題をやったりしました。今でも、森は私の日常です。

木材を積んだ大型トラックが走れる砂利敷きの森林基幹道が、ほぼ全ての森林で、等高線に沿ってシステマティックに面的にあります。過去60年の間で整備されたものです。屋根型の路面、深い側溝と暗渠など、水のマネージメントもしっかりしてあり、雨が降ったあとでも、ぬかるまない、轍も水たまりのほとんどない道です。効率的な森林作業と木材運搬を主目的に作られた道ですが、市民や観光客とって快適な保養空間になっています。シュヴァルツヴァルトは年間宿泊数延400万泊の有名な観光保養地ですが、森林は欠かせない観光資源で、その基盤は、快適な森林保養を可能にする森林基幹道です。

シュヴァルツヴァルトの麓に佇む人口21万の環境首都フライブクルク市は、約5500ヘクタールの森林を市が所有していますが、年間の森林訪問者数は、延数で400万を超えます。森は市民の生活に欠かせない生活空間です。

雨量が多く、急傾斜が多く、地質も繊細で崩れやすい日本の森林でも、2010年以来、岐阜の高山市や北海道の鶴居村で、ドイツの森林基幹道をモデルに、質の高い水をしっかりマネージメントする道ができています。それは、森林作業と木材運搬の効率化だけでなく、一般の人々を森に誘い込むことにも寄与しています。道ができた森は間伐が進み、林内に光が差し明るくなり植生も豊かになります。快適に安全に歩ける道ができて、森も明るく多様性を増します。女性でも気軽に安心して犬と散歩できる場所、ホテルのオーナーが、お客さんを連れて自然観察会や写真撮影会を催せる場所です。

ドイツ視察セミナー 森林業 Forst live (林業機械展) 2019 3. 28 – 4. 1 

ドイツ視察セミナー Ligna国際木工林業機械展 & 黒い森  2019  5. 29 – 6. 2

ドイツ視察 森林業 サステイナビリティの原点

静寂のなかに(「DOYU IWATE」2018年3月号)

喧騒、溢れかえる情報、絶え間ない変化の中で現代の私たちは生きています。自分だけの静かな時間をもつことが難しくなっています。

20世紀の現代音楽に多大な影響を与えた作曲家ジョン・ケージ(アメリカ人)は、自分の音楽活動を次のように表現しています。

「沈黙・静寂は、ざわめきが無い状態じゃなく、私の神経系と血液循環が無故意に機能していることだということが、私に聞こえた。私は、静寂が聴覚的なものじゃないことを発見した。静寂は、意識の変化、転換だ。私は、その静寂に自分の音楽を捧げた。私の音楽は、無故意なものを探求することだった」

様々な作品のなかで「静寂」をテーマにしているドイツの作家ヘルマン・ヘッセは次の名言を残しています。

「あなたの中に静寂があります。それは、あなたがいつでも引きこもることができて、自分自身であることができる神聖な場所です」

人間は社会的な生き物です。家族や友人、学校や職場の仲間、コミュニティなどの繋がりのなかで、様々な義務や課題を与えられ、苦しみや喜びを分かち合い、迷い、考え、決断…、と多くの人が「忙しく」生きています。

私も、南西ドイツの小都市で、育ち盛りの活発な子供が3人と日本人の妻の5人家族で、仕事では日本とドイツの繋ぎ役として、異なる2つの文化の間を行き来しながら(精神的にも地理的にも)、「忙しく」暮らしていますが、時々森や草原を散歩したり、プールや湖で泳いだり、夏の夜にベランダで夜景を眺めながら涼んだりしているときなどに、自分のなかにある「静寂」に引きこもれることがあります。

「静寂」のなかで、疲れが癒され力が蓄えられます。新しい発想が生まれたり、物事が整理され、迷いが断ち切れ、解決策が見えることもあります。生命の神秘、人生の意義について考えを巡らすこともできます。貴重な時間です。

岩手中小企業家同友会の会報「DOYU IWATE」に連載のコラムより

 

ドイツ視察セミナー SLOW 食と文化と街づくり 2019  4. 24 – 28

ドイツ 経営者セミナー オープンマインド

ドイツ視察 自然の力 癒し 学び

持続可能性 〜ノアの箱船とタイタニック

「持続可能性」という言葉は、今から約300年前、ドイツの林業の世界で生まれました。ドイツ語で「Nachhaltigkeit」。具体的には、ザクセン地方のカルロビッツという人物が「森林の持続可能な利用」を、1713年に書籍にまとめて発表したことがその起源です。

しかしそれ以前から、森林を絶やすことなく将来に渡って持続的に利用していく考え方、制度、実践は、世界各地にありました。農家林家や集落の共有地、木材を必要とする産業から生まれています。共通するのは、「将来への配慮」と「危機意識」です。「今の自分たちの世代のことだけを考えて、森を一気に切ってしまったら、将来の世代は生きていけない、村や地域や産業は、消滅してしまう。将来の世代もしっかり生活していけるような森林利用をしなければならない」という考えや思いです。

森林利用を題材に「持続可能性」という概念を、初めてしっかり文章にまとめ世に出したカルロビッツは、鉱山のマネージャーでした。鉱山は、坑道の補強や鉱物の溶鉱の燃料として大量の木材が必要です。鉱山の周りで伐採跡の禿山が拡大する状況がありました。鉱山が、30年後も50年後も、子供の代も孫の代も、しっかり存続していくためには、地域の限られた資源である森林を計画的に持続的に使っていかなければならない、という「将来への配慮」がカルロビッツの提案の根底にあります。

「持続可能性」という概念は、学者や官僚や政治家が考えたものではありません。家族や企業や地域の将来を真剣に「思いやる」現場の人たちから生まれた言葉です。

今日の人類は、気候変動、資源枯渇など、人類存続に関わる大きな問題、課題を抱えています。世界一丸となって具体的な行動をしていかないと、次世代の将来が危うい、という「配慮」の気持ちが高まっています。世界各地の環境団体や市民団体やイニシアチブが、過去数十年に渡って、エネルギー、食料、廃棄物、空気汚染、森林、農業など様々な分野で、粘り強く抗議、提言、行動し、市民の意識を、そして政治や世論を変えています。

「タイタニックは、プロがつくった。ノアの方舟は素人がつくった」(作者不明)

という言葉があります。2つの船の結末は、みなさんご存知の通りです。タイタニックは沈みました。ノアの方舟はみんなの命を救いました。

政治•経済•科学技術の分野のプロと言われる人たちがつくって運転している船は沈みかけています。生き残るためには、素人がつくったノアの方舟に乗り換えなければなりません。素人とは、現場に生きる、地に足の着いた、家族を、企業を、地域を、世代を超えて思いやり、行動する人たちです。

 

ドイツ視察 森林業 サステイナビリティの原点

ドイツ 経営者セミナー オープンマインド

ドイツ視察セミナー 森林業 Forst live (林業機械展) 2019 3. 28 – 4. 1 

ドイツ視察セミナー SLOW 食と文化と街づくり 2019  4. 24 – 28