農のある暮らし

雪が降ったかと思うと次の週には雨が降り、その後比較的暖かい日が続き、もう冬は終わりかなと思った2月末に、マイナス10度を下回る寒波がやってきて、次の週にはまた春日和の天気になる、というふうに、今年のドイツは不安定な冬でしたが、3月も半ばに差し掛かったここ数日は、鳥のさえずりも聞こえはじめ、草木の芽ももうすぐ芽生え始めそうな雰囲気になってきました。春の息吹が聞こえてきます。

私の家族は昨年の3月に、10年前から住んでいるヴァルトキルヒ市内で、郊外の一軒家に引っ越し、敷地内の8畳ほどの小さな畑ですが菜園を始めました。昨年は、引っ越してすぐでいろいろ忙しく、家族のメンバーが、植えたいもの、食べたいものを、無計画に無作為にごちゃ混ぜに植えました。森林学で学んだ「多様性はリスクを分散させる」の原則に則って(あとで付けた理屈ですが)。多少は虫に食われましたが、思った以上に野菜やハーブは育ち、子供達と我が家の食卓を喜ばせてくれました。生態学的には、植物には相性があるようです。例えば、キャベツ類とトマトを一緒に植えると、キャベツに蝶の幼虫がつきにくくなり、トマトの葉っぱが菌類による病気になるのを抑えられます。逆に相性の悪い組み合わせもあります。お互いに悪い影響を与え合うものです。例えば、キュウリは、ジャガイモと相性が良くないようです。

今年は、本も揃えましたし、前もって勉強し、コンセプトを作って計画的に植えて育てようと思っています。立派な菜園を持つ経験豊かな隣のおじいさんが、数日前から畑仕事を始めました。私たちもそろそろ苗床の準備に取り掛からなければなりません。

田舎では土地がありますが、都市部で限られています。庭を持てない都市住民には、伝統的には、鉄道の空き地などで「市民農園」があります。希望する家族や個人に決まった区画が安い賃料で与えられています(人気があり数年の待ちがあります)。賃貸人にとっては、土と植物に触れ、リラックスできる重要な生活空間です。一方で、ここ10数年、総称で「アーバンガーデニング」と名づけられている新しいタイプの市民農園が増えています。区画分けをしないで、メンバー共同で一つの菜園を管理運営する、というものです。そこでは、人と人の「交流」がテーマです。定期的に小さな催し物やイベントも開催されています。移民が多い都市部では、異文化交流、異文化理解の場になっています。人口350万人のドイツの首都ベルリンには、30箇所以上のアーバンガーデニング農園があります。コンクリートと砂利の空き地の上に、移動可能な高床式の畑をつくり、屋外レストラン&カフェを運営している農園もあります。

岩手中小企業同友会 会報「DOUYU IWATE」2018年4月号より

ドイツ・ベルリン視察 都市農業+食育

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