住まいの温熱③ 熱源を何にするか?

26年動いていて、最近壊れた我が家のガスボイラー。そろそろ寿命だと知っていたので、次のボイラーは何にしようか、壊れる前に、設備マイスターや専門家などに色々相談しました。

できれば再エネを使いたい。
まず薪ボイラー。これは手動だし、洗濯機もある機械室が汚くなるし、洗濯物干せなくなるし、薪の調達コスト(値段は上がっています)、貯蔵場所の問題、都市部の住宅地での粉塵の問題などあるのですぐに除外。ペレットボイラーは薪よりメリットはありますが、ペレット貯蔵庫のスペースが確保できないのでこれも除外。ガスをやめて性能のいいヒートポンプでオール電化するという選択肢もありましたが、設備屋さんから「ラジエーターに送る温水が60℃前後と高温なのでエネルギー効率が悪い。モダンな床暖で温水の温度が25℃くらいでいいのだったらヒートポンプはいい選択肢」と言われたのでこれも除外。

ということで再びガスボイラーにすることにしました。ラジエーターに循環させているお湯はガスボイラーが直接温めて送り、浴室や台所で使う給湯は300リットルの温水タンクに貯めて常時50℃に、という以前と変わらないやり方で。変わったのはコンパクトにスリムになったこと。スマート化しアナログがデジタルになり、携帯アプリで遠隔操作できるようになったこと。エネルギー効率もいいので、ガス代が20%くらい削減できる予定です。

ガスと電気と水を一手に任せている(契約している)地元シュタットベルケ(エネルギー公社)は、ガスも「バイオガス」という料金を選ぶこともできて、これであれば一応再エネ。

温水タンクには、電熱棒を差し込む穴が2つついています。これは、主に、ガスボイラーが壊れたときに電気で湯沸かしできるようにするためのバックアップです。そこに、昨年屋根に取り付けた自家消費用の10kWpの太陽光発電の余剰電力を使おうと考えています。1kWhあたり0.08ユーロくらいで発電しているので、ガス代とほぼ同じで、ソーラー電気湯沸かしできます。そうすると、暖房を使わない夏場は、ほぼ太陽光だけで湯沸かしできて、ガスボイラーを休ませることができます。

写真は、古いボイラーと新しいボイラーです。26年間、家の様々な住民の尊厳ある温かい生活を支えて寿命を迎えたガス燃焼炉の写真も。

現在配管は今むき出しの状態ですが、近いうちに、断熱屋さんが来て、断熱施工(パイプを断熱材で包む)します。

住まいの温熱② 暖かい住まいという基本的人権

ドイツをはじめ欧州諸国では、住まいが一定以上の室温に保たれることが人間として尊厳ある生活をするための基本的な需要と捉えられています。
それは、法律にも反映されています。例えばドイツでは、賃貸法(Mietrecht)というのがあり、そのなかで大家に義務付けられていることがあります。それは、どの部屋も基本的に20-22℃以上に保たれるように(細かいことを言うと居間と台所は20-22℃、寝室は18-20℃、浴室トイレは22-24℃)、セントラルヒーティングを設定しておくことです。ただし夜間(23時から6時)は、18℃まで下がってもいいことになっています。
この条件が維持できないような家のつくり、暖房装備、暖房の設定などにより、実際に賃貸人が寒い思いをした場合は、賃貸人は大家に対して家賃の部分的返還を請求できることになっています。それが原因で病気になったりすると損害賠償請求までできます。
我が家の26年使われていた古いガスボイラーも、新しくと取り付けたガスボイラーも、外気温の変化に合わせて、出力を自動で上げ下げして(ラジエーターに送るお湯の温度を40℃、50℃、60℃、70℃と調整できる)、温度を設定できるようになっています。昼間は20℃、夜間は室温16℃にボイラーを設定しています(昼間の余熱蓄熱があるので実際には18℃以下には下がらないので)。今ボイラーを確認したら、外気温は6℃、設定室温は20℃で、ラジエーターに送るお湯の温度は47℃となっています(写真)。

住まいの温熱① ボイラーが壊れた

2週間前に我が家の暖房(セントラルヒーティング)と給湯を賄うガスボイラーが壊れ、地元の暖房設備マイスターさんがすぐに対応してくれました。前の家主のときから26年間稼働していたので、そろそろ寿命が来ると覚悟はしていましたが、最悪なことに冬の真最中にそれが来てしまいました。幸い設備マイスターが忙しい仕事を調整して最短で新しいガスボイラー(24kw)と給湯タンク(300リットル)を調達し設置するというスーパーマンのような仕事をしてくれましたので、暖房が切れて寒い日は2.5日間ですみました。
リンクしているビデオは、ドイツ手工業会議所が職人の大切さをアピールするエキセントリックな広報キャンペーンの一つです。まさにこれと同じ状況が我が家に起こりました。仕事中のマイスターに「今の貴方の仕事です」と見せたら「自分の会社の宣伝にピッタリだ」と笑って喜んでいました。
ドイツでは暖かい家は「基本的人権」であり、暖房設備会社は、人々の基本的需要を支える責任の重い仕事です。緊急時の電話に対応する体制も持っていなければなりません。
我が家の緊急事態をきっかけに、ここ10日ほどで「住まいの温熱」について色々考え、調べたりしましたので、これから小分けにして紹介していきます。