オンラインセミナーを開始します

これまで、現地の視察セミナーや講演会、ワークショップにて「直接対面」にて限られた方々に提供していたものを、ウェビナーにより「デジタル対面」にて、より多くの方々に安価に提供します。

通信環境の良い場所で、パソコンやタブレット、スマホで、気軽に会社や自宅や外出先からアクセスください。

ZOOMのウェビナーのシステムを使います。基本的に、視聴参加者のお名前は、他の視聴参加者の画面には表示されません

参加のお申込み&お支払いのマネージメントにはPeatixを使用します。お申し込み後に、Zoomの参加者事前登録URLを送ります。登録が終了すると、オンラインセミナーへの参加リンクが記載されたメッセージが自動送信されます。各セミナーは開始20分前に開場します。

別の参加&申し込み方法をご希望の方は、事前に個別にお問い合わせください。メールはこちらへ

下記は、公募型オープンセミナーの案内です。

テーマに関心をお持ちの方でしたら、一般の方からプロまで、どなたでもお気軽にご参加ください。動画写真ホワイトボードも効果的に使い、素人の方でも容易に理解・イメージできるように話します。レクチャーの後には、口頭による質疑応答の時間を設けます。聴講参加者のみなさまには、セミナー終了後にスライドのハンドアウトを配布します。ご質問、ご不明な点がございましたら、遠慮なくご連絡ください。メールはこちらへ

団体、企業などでご要望がありましたら、オーダーメイドにて、クローズなセミナーの開催にも応じます。ご希望内容、期日など、お気軽にお問い合わせください。メールはこちらへ

サステイナブルは気配り ー 森から建物まで  1)〜7)

 

1)持続可能な多様性! ー 多方面へ「気配り」する森林業

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 「持続可能性」という概念は、ドイツの森林業の世界で約300年前に生まれた
  • 次世代への配慮と思いやりの心が、多方面への「気配り」のある森づくりを生む
  • 森林業とは? ー 「自然と共に」「循環の思想」「多機能性」
  • 土壌を守り育てる! ー 森林業のもっとも重要な資産
  • 欧州のフォーレスターが羨む森林大国日本の大きなポテンシャル
  • 「ソロ」ではなく「協奏」! ー ドイツやスイス、日本の実証事例とパイオニア

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月14日(木) 17:00-18:30   
2020年 5月16日(土)  16:00-17:30
2020年 5月26日(火) 20:00-21:30 

2) 森づくりは道づくり ー 持続可能で多機能な森林業を可能にする道インフラ

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 自然に「気配り」した質の高い道のインフラが、生産性の高い持続可能な森林業を支える
  • いい道のインフラは、森林作業の安全性を向上させ、人の命を救う!
  • 多雨、急傾斜、複雑な地形、崩れやすい土質の日本の森林でも可能!
  • 「水」とどう付き合うか ー 集めない、加速させない、停滞させない、という3原則
  • グリーンインフラになる道づくりのディテール
  • 美しい森林道は、観光業と市民のレジャー・健康を支える!

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月19日(火) 17:00-18:30 
2020年 5月23日(土)  16:00-17:30
2020年 5月28日(木) 20:00-21:30 

3)人も森も守る! ー 森林作業の安全と土壌を保護する作業

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 危険な仕事「森林作業」に必要な心構え ー 「敬意」「気配り」「謙遜」
  • マイスター(先生)が現場で徒弟(生徒)に教えることの大切さ
  • 防護装備 ー 鎧とスポーツウェアーのバランス
  • 人命救助が出来る道を起点に作業を考える
  • 土壌を保護する森づくりと作業システム

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2020年 5月20日(水) 19:00-20:30 
2020年 5月24日(日)   15:00-16:30

4)木材の多様な地産地消 ー 多様性のある地域木材産業が地域を国を豊かにする

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 木は「多様」、だから多方面への「気配り」がある多様な木材産業が必要!
  • 森林・木材クラスターは、地域経済を支える大きな柱!
  • 製材工場 ー 「気配り」力が問われる森と木材産業のつなぎ役!
  • 地域を国を豊かにする理想的な木材のロジスティック
  • 家づくり ー地域の零細企業が支える品質とイノベーション
  • 手工業のルネッサンス ー 家具、建具、木工細工
  • 木質バイオマスエネルギーはソリューションになるか?

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2020年 5月27日(水) 17:00-18:30 
2020年 5月30日(土)   16:00-17:30 

5) サステイナブルな家づくり ー 自然素材を活かしたシンプルな健康省エネ建築

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 木や土や石といった伝統的な自然素材の優れた性能
  • 「調熱」: 熱エネルギーを吸収し放出する自然素材
  • 「調湿」: 湿気を吸収し放出する自然素材
  • 自然素材と衛生 ー 防菌効果
  • 古建築を、安価に、エコに、アップビルディング!
  • シンプル イズ ベスト! ー 自然素材で、暖房も機械換気もいらない年中快適な家

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2020年 6月2日(火) 17:00-18:30
2020年 6月4日(木) 20:00-21:30 
2020年 6月6日(土) 16:00-17:30 

6)森林浴 Waldbaden

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 「森林浴」:日本生まれの言葉がドイツでトレンド
  • 森林業をするための美しく安全な道があるから、市民が気軽に日常的な森林浴
  • 気軽にアクセス可能な「気配り」の森林が、地域の大きな観光資源! ー 「黒い森」の事例
  • 世界からみた日本の森林の大きなポテンシャル
  • ハイブリット自転車で高齢者が森林で快適サイクリング
  • 森林で乗馬、ヨガ、狩猟
  • 「森の幼稚園」 ー 森林は絶好の学びの場

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2020年 6月9日(火) 17:00-18:30 
2020年 6月11日(木) 20:00-21:30
2020年 6月13日(土) 16:00-17:30 

7)人間が森から学ぶべき共生の原則

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 人間の2000倍長く存続し、人間の7000倍の質量を有する木の賢い生存コンセプト
  • Wood Wide Web
  • 木と他の生物による同じ目線のパートナーシップ
  • 植物が実践する迅速で誠実でオープンなコミュニケーション
  • 木は、次世代や弱者の仲間への配慮をしている
  • 環境に変化に対応し、みんなで一緒に行動する

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2020年 5月22日(金) 19:00-20:30 
2020年 6月10日(水) 17:00-18:30
2020年 6月14日(日) 16:00-17:30

コロナ対策の最後の砦

コロナ対策の最後の砦である集中治療(ICU)。その体制の量と質が、現在、救命のカギとなっています。日本におけるICU体制の脆さとリスクは、数週間前から複数のメディアで報道されています。先進国のなかではかなり低いレベルで、人口10万人あたりICUベット数は5。また地域によって格差があり、ダントツに少ないのは新潟で1.4、岩手で2.7となっています。また高度な人工呼吸器(通常のものやECMO)を使用するのに必要な専門医の数も体制も不足しているようです。

https://www.jsicm.org/news/statement200401.html

https://www.jsicm.org/news/upload/icu_hcu_beds.pdf


私が住むドイツでは、集中治療体制は、幸運なことに世界トップレベルで、コロナの前に人口10万人あたりICU33ベットあり、ここ6週間あまりで約48に増やされ、うち人工呼吸器装置が使用できるベット数が約36あります。ICU1ベットあたりの看護師の数も規定で1人と決められています(日本の規定では1ベットあたり看護師0.5人)。
医療崩壊が起きたスペインやイタリアでは、ICUベットは10万人あたり8-9です。日本はその半分の非常に脆弱で「綱渡り的な」ICU体制でここ数週間やってきているのですが、下期にリンクする日本集中治療医学会の最新の統計を見ると、概ね持ちこたえており(いくつかの病院ではICUのオーバーキャパが起こったとの情報も他ではありますが)、4月27日をピークに人工呼吸器の使用(普通のものもECMOも)は減少しています。

https://covid19.jsicm.org/?fbclid=IwAR1IiKb9-Y80G5ZItGCnWjxRb21OWlZBevD0ZlmSHHPiXGdeuPZiGO4tXKo


安全な抗薬やワクチンが開発されるまでの間は、ICUのキャパを中心的な基準として様々な対策をしていくべき、という複数の専門家の意見に私は同調します。そう考えた場合、日本は非常に脆く少ないICUキャパであるということをしっかり受け止めて、より慎重で用心深い対策をやっていかなければならない、ということになります。これまで日本では、幸運なことに、コロナでの死亡者の数は、他の国と比べてかなり低く抑えられています。その理由や要因は解明されていません。ですのでまだ予断を許さない状況であると考えたほうがいいと思います。


医療現場で働いていらっしゃる方々に、多大な敬意と感謝の気持ちを込めて。

FOREVER GREEN


下記は、ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンなど有名な音楽家と一緒に仕事をしてきたキーボーディストのチャック・リーヴェルが、彼が情熱を傾けるもう一つ職業分野である森林について、名著「FOREVER GREEN」で書いている一節です。【森林業】にとって大切なことを音楽家の感性で簡潔に表現しています。

「私たちの森林。その維持のためには、繊細なハーモニーが必要だ。それは、すべての奏者が同じメロディーを奏でるなかで生まれる。わずかな人間だけでは、私たちの森を救い、維持し、保護することはできない。木の保全育成家、木こり、フォレスター、製材工場経営者、環境保護家、民間の土地所有者、ハンター、動物愛護家、教師、手工業家、関係する市民、森林生産物と林業に携わる企業、すべてのプレイヤーが一緒にならなければならない。この楽曲では、ソロはやってはいけない。それをやるには、森は傷つきやすく、リスクが大きすぎる。私たちみんなが、私たちの森について学び、高い責任感をもって木を利用するプログラムを支援する努力をしていかなければならない。そうすることによってはじめて、後続の世代に素晴らしい森を遺すことができる。個々の木々、個々の森林は、独自の歌曲をもっている。私たちは、それらのメロディにしっかり耳を傾けなければならない。それらに耳を傾けるなかで、様々な森の秘密と素性が開かれていくとき、私たちは、少しでも時間をとって、木の下に座り、上を眺め、感謝の気持ちを持つべきだ」

世界各国で、意地や誇りや欲やエゴ、偏見や狭い視野がベースになった「ソロ」演奏がされています。一方で、森に、地球に耳を傾け、多様な人たちと一つのメロディーを「共奏」することを呼びかけ、実践を試みる人たちもいます。私は後者であり続けたい、欧州の人たちが羨む日本の豊穣な森を後世の人たちに遺すことに貢献したい、と思っています。

その場所の適樹が「将来の木」に!

3年前から今の場所に住んでいますが、裏山の森林の散歩コースに、「早く間伐して手入れした方がいいのに」と気になっていた区画がありました。そこに数日前に将来木のマーキングがされていました😊。自分の森ではありませんが、持ち主が誰かわかりませんが、嬉しくなりました。
しかも立地条件を配慮した選木がされていました。おそらく40年くらい前にトウヒとモミを植林してできた林です。でも選択されている将来木(写真中に+でマーキング)は、モミとトウヒの間から天然で生えてきて育ったと思われるサクラとミズナラ。南斜面で土は乾燥していて日射も風当たりも強いので、根が浅いトウヒには全く向かない場所(風害にあったり、水不足で弱ってキクイムシに食べられる)、モミの木にとっても表土が少なく、標高的に気温も若干高めであまり向かない。一方自然に生えてきたサクラやミズナラは、まさにこの場所の適樹。
自然はあるべき方向性を示してくれます。人間は、自然をしっかり観察して、「自然と共に」ちょっとした手助け、方向づけをすればいいのです。選ばれたサクラやミズナラの樹冠スペースを直接邪魔しているトウヒやモミの木が切り出されます。

日曜日の課題

「木の葉っぱが秋に赤や黄色になるのはなぜ? 今から2時間、ネットや本で調べて、発表しなさい! 一番良くできた子には、アイス屋さんでスパゲッティーアイスをご馳走する」と日曜日の朝食のときに、我が子3人に課題を出しました。

控えめだけど、質問に一番厳密に簡潔に9割方正しく答えたのは15歳の長女。学校でも良く手を上げて発表したがる13歳の次男は、色の変化だけでなく、葉っぱがなぜ落ちるかとか、光合成のことまで説明。7歳の末娘は「葉っぱは死ぬのが怖いから赤くなる」「いや違う、本当は虹が色をつけてくれるから」と哲学的で詩的な答えをくれました。

生物学的な答え:葉っぱの中には、黄色をもたらすカロチノイド、赤色をもたらすアントシアニン、そして緑色をもたらすクロロフィルという分子がある。光合成をするのはクロロフィルで、マグネシウムと窒素を中核とする有機物質からなりたっており、たくさん光合成をする春から初秋にかけて、通常このクロロフィルの割合が多く、黄色のカロチノイドと赤色のアントシアニンを覆ってしまうので、緑に見える。晩秋で寒くなり、土も凍りはじめ、光合成に必要な十分な量の水を土壌からの吸い上げるのが困難になり始めると、木は葉っぱを落とし、水不足の冬環境に適応するが、その前に葉っぱのクロロフィル分子を解体し、その主要物質であるマグネシウムと窒素を枝や幹や根に、次の春が来るまで貯蓄しておく。この落葉前の過程で葉っぱのクロロフィルが少なくなると、隠れていたカロチノイド(黄色)やアントシアニン(赤色)が表にでてきて、「紅葉」となる。

カロチノイドやアントシアニンには、綺麗な秋の紅葉を見せるだけでなく、紫外線からのダメージを防ぐという、木の葉っぱを守る大切な役割があります。また赤色の原因分子であるアントシアニンは、防虫防菌作用もあります。

子供達の発表のあと、「じゃあ、どこから赤や黄色や緑の色が出てくる」とさらなる質問しました。上の2人はすぐに「そういう色素を持った物質がそこにあるから」と回答。「ブー、外れ」。すると末っ子の娘は「色は空から降ってきている」と詩的かつ、核心に迫ることを言いました。

物理学的な答え:人間に見える色は、太陽光の可視光線と、それに対する物質の反応から生じる。緑の葉っぱは、主体のクロロフィルが、波長の短い青の可視光線と波長の長い赤や黄色の可視光線を吸収し、緑の部分だけ反射しているから。カロチノイドは、黄色の波長を反射し、他の色の波長を吸収、アントシアニンは、赤色の波長を反射し、他の色の波長を吸収。

この季節外れの質問をしようと今朝ふと思いついたのは、我が家の前庭に育つ樹齢50年の日本原産の「のむらもみじ」の赤紫の葉っぱが目に入ったから。おそらく江戸時代に天然のイロハモミジから品種改良されはじめ、公園や庭先に植えられているこの品種は、春先に赤紫色の葉っぱを広げ、夏に緑っぽくなり、秋に朱色の綺麗な紅葉をします。光合成をする期間に、緑じゃなく赤が優性なこのモミジには、綺麗な色を長い期間見たくて品種改良した人間の都合だけでなく、生物学的意味があるようです。天然のイロハモミジは、日陰の湿った場所に適応した樹種で、太陽光がたくさん当たる公園や庭では、紫外線が強すぎるため、自分をまもるため、赤色のアントシアニンをたくさん身につけたノムラモミジに変異し新しい環境に適応して行ったようです。

美しさの背景にあるもの

中央ヨーロッパの田舎の美しい景観。住んで25年、見慣れている景色ですが、いつ見ても新鮮で、ため息混じりに見とれてしまいます。特に花と新緑、生命の躍動が感じられる今の時期は。
この景色は、文化景観(カルチャーランドスケープ)と呼ばれ、人々の自然への働きかけ、営みがあってはじめて維持されます。副業や趣味が主体の農業や森林業、この景観を一つの資本とする観光業、個性豊かで質が高い家族経営の商店、地域の生活の需要と品質を支えるレベルの高い様々な手工業、グローバルに活躍しつつも地域の雇用と人材育成を大切にする中小企業、各種芸術家、行政、教育関係者、地域の各種NPO団体、そして人々の健康を支える医療。これら多様なプレイヤーが有機的に密接に繋がり補完し合うことで、地域が、この美しい景色が維持されています。
今回のコロナ危機は、この一見のどかで平和に見えるこの地域にも、大きなダメージを与えるでしょう。しかし、リーマンショックやその他の過去の危機を克服してきたように、「複合的な多様性」という危機への強さをもって、地域で助け合い、粘り強く、クリエイティブに乗り越え発展して行くでしょう。
ロックダウンから1ヶ月、軒先や散歩の途中やスーパーでの買い物のときに出会う近所の人や知人、友人、経営者、職人、会社員などと、2m以上の感染防止距離を置いて立ち話。話題の中心は自ずとコロナ。「今大変だけど、みんなで耐えて乗り切ろう」「新しい商売の方法を考えなきゃ」「健康が一番、気をつけて」と励まし、刺激しあっています。
私も、少なくともこれから数ヶ月は、この地域の美しい景色や持続可能なコンセプトや事例など、直接日本のお客さんに生で見せて体験してもらう視察セミナーはできませんが、インターネットの助けを借りてオンラインでのレクチャーやセミナーを提供し、あとはこの機会に執筆や、次の展開のための充電と構想の時間に当てたいと思っています。

Taifun-Tofu -ドイツ豆腐パイオニア

南西ドイツ、シュヴァルツヴァルトの西の麓に位置する環境首都フライブルク市。その隣村ホッホドルフに、有名な豆腐工場がある。名前は、タイフーン豆腐有限会社(Taifun-Tofu GmbH)。国際用語にもなっている「台風」にちなんだ名前だ。従業員は現在約270人、年間売上げは、2019年で3800万ユーロ(約46億円)、1週間に約100トン、約50万個の豆腐商品を生産し、ドイツを中心に欧州15カ国に販売している。ドイツでは市場シェアNo.1の豆腐メーカーである。そして商品は100% Bioビオ(有機認証食品)。欧州の約1万軒の自然食品の専門店、その他大手スーパーや小売店数十社の店舗に並んでいる。

従業員270人の中堅企業に成長
従業員270人の中堅企業に成長

小さなそよ風が大旋風に

 名前のとおり、欧州の食品業界に豆腐の「大旋風」を巻き起こしているタイフーン社であるが、始まりは、フライブルク市旧市街にある小さな建物の地下室から起こった小さな「そよ風」だった。
 1985年、環境と食に関心があり、社会を変えたいという思いを持った数名の若者たちが、アメリカ旅行で知った豆腐という栄養価の高いベジタブルフードと、それを使った様々な料理の可能性に魅了され、いろいろ実験を試みた。その中心メンバーがタイフーン社の設立者でオーナーのヴォルフガング・ヘック氏だった。
 翌年の1986年には、週に4kgの有機豆腐を製造し、朝市の屋台で販売を開始した。最初からビオであった。当時、ヨーロッパでは目新しかったこの食品は、フライブルクですぐに人気が出て、1987年にはタイフーン社を設立、新規に広い工房を借りて、製造量を週800kgに増やし、売り場もフライブルクで新しくオープンしたマーケットホールの一角に移した。この新しい手作り食品の地域での知名度は益々増して、フライブルク市内と周辺地域の数軒のビオの小売店から販売したいという問い合わせが来るようになり、卸売も始めた。販売量が増えると、地域のビオ卸売会社に小売店への販売を委ねるようになった。

タイフーン豆腐有限会社の設立者ヴォルフガング・ヘック氏、フライブルクのマーケットホールにて
タイフーン豆腐有限会社の設立者ヴォルフガング・ヘック氏、フライブルクのマーケットホールにて

タイフーン社躍進の大きな転機は、1990年1月のベルリンでの食品見本市であった。ベルリンの壁が開けられて2ヶ月後、彼らが見本市会場の片隅の小さな屋台でフライパンを使って焼いた試食の豆腐は、多くの東ベルリン市民の好奇心をそそり、焼いた側からすぐになくなる状況だった。そこに広くドイツ各地で自然食品の卸売を行う会社が訪れ、「うちの会社の商品リストに入れたい」と申し出た。そこからタイフーン豆腐の全国販売が始まった。
 1994年にも大きな変革があった。従業員が20人にまで成長していたタイフーン社は、現在の所在地であるホーホドルフの工業団地に新しい工場をつくり、これまでの手工業的な生産から、工業的生産へ大きくシフトした。それから今日まで約25年、このビオの豆腐製造会社は、人々の健康志向や環境意識の高まりも受けて年々市場を拡大し、それに合わせて生産工場も増築拡張し、従業員も増やしていった。

初期の小さな豆腐工房での製造風景
初期の小さな豆腐工房での製造風景
現在の豆腐工場での製造風景 -豆腐ソーセージ
現在の豆腐工場での製造風景 -豆腐ソーセージ

ヨーロッパ人の味覚に合わせた多様な豆腐商品

 豆腐のパイオニア企業タイフーン社の成功の理由の一つは、その商品の多様さとヨーロッパ人への馴染みやすさである。「ヨーロッパ人の味覚に合わせて、アジアにはない新しい商品を開発した」と1994年から会社で働く経営マネージャーのアルフォン・グラフ(Alfon Graf)氏は言う。木綿豆腐や絹ごし豆腐、揚げ出し豆腐など日本でも馴染みのものもあるが、人気があるのは独自に開発した燻製豆腐である。
 「ヨーロッパには昔から燻製の文化があるからね。それを豆腐に応用したんだ」とグラフ氏。
 また、ウインナーソーセージやスライスソーセージ状の燻製豆腐もある。味のバリエーションも多彩で、例えば木綿豆腐には、バジル味、オリーブ味、マンゴーカレー味があるし、揚げ出し豆腐には、ピザ味、イラクサ味などがある。

ヨーロピアナイズされた多彩な豆腐商品
ヨーロピアナイズされた多彩な豆腐商品

ベジタリアンと豆腐

 タイフーン社は、料理のレシピの開発も行っており、会社のホームページには、サラダやサンドイッチ、スープ、グリル/オーブン料理、スパゲッティやピザ、ケーキやアイスなど、オードブルからデザートまで、アジア風からヨーロッパ風まで、ヨーロッパ人の趣向に合わせた多彩な料理が紹介されている。豆腐の発祥地であるアジアにもいろいろな豆腐料理があるが、大きな違いは、タイフーン社のレシピには肉や魚が一切使われていないことである。ドイツで豆腐を食する人たちの多くはベジタリアンで、たんぱく質の多い豆腐を、肉や魚の代価として食している。ベジタリアンは現在世界中で増加しているが、ドイツでは全人口の約10%がベジタリアンとの調査結果もある。そのうち10%(すなわち全人口の1%)は、ビーガン(動物性のものを一切食べない完全な菜食主義者)である。ベジタリアンやビーガンの人にとっては、豆腐は欠かせない食品になっている。最近各地で急速に増加しているベジタリアン、もしくはビーガンレストランでも、豆腐は必ずと言っていいほどある。
 最近20年あまりのこのような菜食文化の普及も、タイフーン社が小さな風から大きな旋風に成長した理由の一つである。ベジタリアンは、環境保護や動物保護、健康志向などの動機がベースとなっているが、タイフーン社の設立当初のメンバーたちも、同様の問題意識をもって事業をはじめ、現在でもそれが継続されている。

多様な豆腐のレシピ。
多様な豆腐のレシピ

 さて、豆腐の製造には大豆が必要であるが、次回のレポートでは、タイフーン社がコーディネートする欧州でのその大豆の栽培と品種改良の取り組み、会社の理念である「福祉エコノミー」について紹介する。

タイフーン豆腐有限会社のサイト

春の訪れ、心の静寂、未来の予感

2020年3月29日 ドイツ シュヴァルツヴァルト

私たち家族が住む森の近くの住宅街。数軒の庭先のモクレンの花びらが少しづつ落ちてきて、桜の花が咲き始めました。森では、ブナの若葉が芽吹きかけています。小鳥のソロやデュオやトリオも増え、あちこちで同時演奏をするようになりました。草地のネズミを狙うはハヤブサやワシも中空を旋回しています。天気は、晴れたり急に雨が降ったり、気温20度を超えた次の日には10度に下がったりと、この時期の典型的な「気まぐれ」。いつもと変わらない南西ドイツの春の訪れです。

しかし、一つだけいつもと違うものがあります。それは「静けさ」です。ここ2週間、医療崩壊を防ぎ、できるだけたくさんの人の命を守るため、国の指示にしたがって、みんなが「連帯」し、制限された生活を送っています。学校や幼稚園は閉められ、サッカーもテニスも水泳もできない。音楽やヨガの教室もない。フィットネススタジオや美容院にも行けない。ブンデスリーガの観戦もできない。コンサートや映画にも行けない。レストランやカフェで食事や会話を楽しむこともできない。洋服や靴や台所用品のショッピングもできない。仕事も可能な限りホームオフィスに移行。かなり大幅な制限です。家の外に出かけるのは、食品の買い物と散歩やジョギング、ちょっとしたサイクリングくらい。街の中がかなり静かになりました。街だけでなく、人の心も「静か」になったように私は感じています。

私は自分の専門が森林ですし、森の近くに住んでいるので、日常の時間の合間によく森を散歩したり、マウンテンバイクで走ったりします。生活制限がかけられてからは、時間もあるので、毎日必ず森に行くようにしています。息子とジョギングしたり、自転車に乗ったり、娘と秘密の場所に行者ニンニクを採りに行ったり、妻と長い散歩に行ったり。今そこですれ違う人たちの雰囲気というかオーラが、以前と違う感じを受けるのです。子供連れの家族、老夫婦、犬と散歩する人、友達同士など、以前と同様に様々な人たちが森でリフレッシュしているのですが、森で出会う人々に、心の落ち着きが感じられます。すれ違うほとんどの人が、朗らかに「ハロー」「グーテンターク」と挨拶してくれます。以前も大抵の場合、挨拶はありましたが、挨拶のニュアンスが、習慣的なリアクションや社交辞令的なものではなく、思いやりと連帯感が感じられます。感染予防のため、2m以上のお互いの距離はありますが、心の距離が逆に縮まったような感じを受けるのです。以前は、森でリラックスしたいけど十分にそれができていない感じの、ストレスや忙しさを森の中に持ち込んでいるキリキリした雰囲気の人達がよくいましたが(私自身も時々そうでした)、今そういう人がほとんどいないのです。森ですれ違う人たちみんなが「今を生きている」「この瞬間を味わっている」といった印象を与えてくれます。大人に落ち着きや他者に配慮する余裕ががあるので、一緒にいる子供や犬も幸せそうです。生活の自由を大幅に制限されたことが、人々に思わぬ心の自由と余裕を与え、家族や友人との絆を深め(直接会わなくとも電話やメールでも)、他人への配慮やリスペクトも高まったのでは、と推測しています。

もちろん、他方で多くの人たちが、先行きが不透明な現状に不安と恐怖を抱いています。会社の経営どうしようか、自分はいつまたホテルで働けるようになるか、銀行への返済はどうしようか、と深刻な悩みを抱えている人たち。そこには、国による明確で迅速な意思表示とサポートが欠かせません。

また、過度に緊迫した、そして場所によっては非常に悲惨な状況のなかで毎日「戦っている」医療関係者がいます。今一番大切な仕事をされている方々の苦悩をできるだけ早く終わらせる、静めるために、できるだけたくさんの人の命を救うために、今大半の国民がやらなければならないことが、できる限り動かず、接触せず、静かにしていることなのです。経済や個人のエゴより人の命を優先して。そして突然強いられたその不便な生活は、人々の心に当然のこととして不安や不満も与えたましたが、同時に「静寂」と「時間」を与えました。これらは、この後の未来に何かをもたらすと私は思います。

私が尊敬するドイツの作家ヘルマン・ヘッセは、「愛」をテーマに人間の内面を描き、一人一人の内面を変えることで世界を変えようとしました。そしてその心の変化の源として「静寂」を尊びました:「あなたの中に静寂があります。それは、あなたがいつでも引きこもることができて、自分自身であることができる神聖な場所です」。

ドイツの著名な未来研究家のマティアス・ホルクス氏も、直近のコラムで、人々の内面から未来が作られていくことを指摘しています。
※ホルクス氏のコラムの日本語訳: https://blog.arch-joint-vision.com/?p=679

これから数ヶ月、私たちの世界に大きな変化が起こることが予想されます。これまでの世界でもあったように、苦しく悲しく悔しい事も、混乱や混沌(カオス)も起こるでしょう。しかし同時に、愛情や希望や安堵感を持てることも。一人一人の心の変化が、より住みよい持続可能な社会に向けた大きな変化を生み出すポテンシャルが、今回の危機にはあると私は感じています。ミクロ物理の世界には「量子跳躍」という現象がありますが、自然は、決定的な瞬間には、ステップではなく「ジャンプ(=跳躍)」します。人間の歴史も今、「跳躍」すべき瞬間に近づいている予感がします。

コロナの後の世界

作者:Matthias Horx 未来研究家 www.horx.com  www.zukunftsinstitut.de

2020年3月16日  ドイツ語原文 ”Die Welt nach Corona” https://www.diezukunftnachcorona.com/die-welt-nach-corona/

日本語訳:池田憲昭

コロナの遡り予測:危機が終わったとき、私たちは、過去を振り返って何に驚いているでしょうか。

「コロナがいつ終わり、いつになったら全てがまた元どおりに戻るか」という質問が現在私のところに頻繁に投げかけられます。それに対する私の答えは「決して元には戻らない」です。未来が方向を変える歴史的な瞬間があります。私たちはそれらを分岐と呼びます。または深い危機。今がまさにその時です。

私たちが知っている世界は解消しようとしています。しかし、その背後には新しい世界が形成されようとしています。どのような世界が形成されようとしているのかは、少なくとも、かすかに感じ取ることができます。そのために、企業のビジョン策定プロセスでいい経験を積んだ私たち(弊社)のエクササイズを提供したいと思います。RE-Gnosis(遡り認識)と呼びます。私たちはこの手法では、PRO- Gnosis(先を認識=予測)のように、現在の立ち位置から「将来を見る」ことはしません。そうではなく、未来から今日に遡りするのです。クレイジーに聞こえますか? 試してみましょう:

Re-Gnosis(遡り認識): 2020年秋の私たちの世界 

今年の秋の状況を想像してみましょう。2020年9月としましょう。大都市のストリートカフェに座っています。暖かい日で、人々は再び路上で動いています。

人々は異なる動きをしているでしょうか? すべては以前と同じですしょうか? ワイン、カクテル、コーヒーの味は以前と同じでしょうか? コロナの前と同じでしょうか?それとも、以前より美味しい?

振り返ってみると、私たちは何に驚くでしょうか?

私たちがやらなければならなかった社会生活上の制限(断念)が、めったに孤立につながらなかったことに驚くでしょう。それどころか、最初の衝撃のショック後、あらゆるチャンネルを使ったたくさんの奔走、会話、およびコミュニケーションが突然停止したことに、多くの人々が安堵感を持ちました。断念は必ずしも損失を意味するわけではありません。新しい可能性が開かれることもあります。それは、多くの人が過去にすでに体験していることです。例えば、間隔を開けた断食をし、突然食べ物を美味しいと感じた、とか。逆説的ですが、ウイルスが私たちに強制した物理的な距離は、新しい親近性をもたらしました。普通であれば会うことのなかった人々に出会った。古くからの友人と頻繁に連絡を取り、緩くなっていた関係を再び強化できた。家族、隣人、友人は、より親密になり、埋もれていた紛争を解決したケースも。

社会的な礼儀。以前その喪失が顕著でしたが、それが再び増加しましました。

現在、2020年秋、プロサッカーの試合会場。春にあったような観客の憤激と乱暴な雰囲気とはまったく異なります。なぜそうなのか、私たちは不思議に思います

私たちは、デジタル文化的手法が、現場でどれだけ速く普及し実証されたかに驚くでしょう。ほとんどの働き手が、「ビジネスフライトのほうがいい」と常に抵抗していた電話会議とビデオ会議は、非常に実用的で生産的であることが判明しました。教師はインターネット教育について多くのことを学びました。ホームオフィスは多くの人にとって当然のことになりました。即席のアドリブや軽業師のような時間のやり繰りも含めて。

同時に、明らかに時代遅れの文化的手法がルネッサンスを経験しました。電話をかけると、留守番電話の声でなく、実際の人が出るようになりました。このウイルスは、セカンドスクリーンなしで長電話をするという新しい文化を生み出しました。また「メッセージ」自体が、新しい意味をもつようになりました。人々が真のコミュニケーションをするようになりました。誰も急かされたりしません。誰も足を引きとめたりもしません。これにより、アクセシビリティ(連絡の取りやすさ)の新しい文化が生まれました。確実性。

忙しすぎて静かに落ち着くことができなかった人たち、そして若者も、突然、長い散歩に出かけるようになりました(「散歩」という言葉が、以前はほとんど外国語であった人たちが)。本を読むことが急に流行文化になりました。

テレビのリアリティショーが急に恥ずかしいものに写ってきました。くだらない物、すべてのチャンネルで流れる無限の魂のゴミ。いいえ、それらは完全には消えませんでした。しかし、それらは、急速に価値を失っていきました。

誰か、政治的正当性の論争を覚えているだろうか?

無数にある文化闘争…それらは何について争っていたのだろう?

クライシス(危機)は、古いものを解消して、不要にすることで、その主要な効果を発揮します。

シニシズム(冷笑主義)。価値の切り下げによって世界を遠ざけるさりげないこの手法は、突如、大幅なアウトになりました。

メディアの誇張 – 不安 – ヒステリーは、最初の噴火時にはありましたが、そのあとは限度を越えない範囲で抑えられるようになりました。

さらに、残酷な犯罪物シリーズの無限の洪水は、その転換点に達しました。

夏には、生存率を高める薬が見つかったことに驚くでしょう。これにより死亡率が低下し、コロナは、インフルエンザや他の多くの病気と同様に対処するウイルスになりました。医学の進歩が私たちを助けました。しかし、決定的な要因は技術ではなく、社会的行動の変化であることがわかりました。決定的な要因は、急激で大幅な行動の制限にもかかわらず、人々が連帯し、建設的なままでいることでした。ヒューマン-ソーシャル-インテリジェンス(人間の社会的知性)が私たちを助けました。すべてを解決できると賞賛されている人工知能は、コロナに限っては、限定的な効果しかもたらしませんでした。

これにより、テクノロジーと文化の関係が変わりました。危機以前は、テクノロジーは万能薬であり、すべてのユートピアの担い手でした。今日では、誰もデジタルによる大きな救済を信じていません。信じているのは、ほんのわずかなハードボイルドだけです。テクノロジーの大賞賛は終わりました。私たちは再び人間的な問いに注意を向けています:人間とは何か? 私たちはお互いにどうあるべきか?

私たちは、過去を振り返り、ウイルスの日々のなかで、実際にどれだけのユーモアと人間性が出現したかに驚いています

私たちは、経済が「崩壊」することなく、どれだけ縮小できたかに驚くでしょう。以前は、わずかな増税や政府の介入で経済崩壊が起きると断言されていたのに。多くの企業が倒産、縮小、または完全に異なる何かに変化し、「ブラック4月」、深刻な経済不況、50%の株式市場の低迷がありましたが、ゼロになることは決してありませんでした。経済が、うとうとしたり、眠ったり、夢を見ることさえできる呼吸する生き物であるかのように。

秋の今日、再び世界経済が稼働しています。グローバルなジャストインタイム生産は生き残っています。以前と同様に、何百万もの個々の部品が地球全体で運ばれる複雑に枝分かれした巨大なバリューチェーンを備えた形で。現在、解体され再構成中です。生産およびサービス施設のいたるところで、中間保管施設、貯蔵庫、およびリザーブ(備蓄)が増えています。地場の生産は活況を呈していて、ネットワークはローカル化され、手工業がルネッサンスを迎えています。グローバルシステムは「グローカリゼーション」に向かって流れています。グローバルのローカリゼーションです。

株式市場の暴落による資産の損失も、当初に感じたほど痛くないことに驚くでしょう。新しい世界では、資産が決定的な役割を果たさなくなりました。良い隣人や、花が咲き乱れる菜園がより重要になりました。

ウイルスが、私たちの生活を、私たちがどっちみち変更しようと思っていた方向に変えてくれた、とも考えられます。

RE-Gnosis (遡り認識): 未来への飛躍を通じて現在を克服する

では、何故にこの「先からのシナリオ」が、従来の「予測」とはまったく異質に作用するのでしょうか? これは私たちの未来感覚の特性に関連しています。私たちが「未来」を見るとき、私たちは大抵、乗り越えられない障壁に積み重なってやって来る危険と問題だけを見ています。私たちを轢き飛ばす勢いでトンネルから出てくる機関車のように。この恐怖のバリアが私たちを未来から切り離します。ですから、怖い未来が、常に最も描きやすいのです。

一方、Re-Gnosis(遡り認識)では、自分自身、自分の内なる変化を将来の計算に含めた認識のリボンが形成されます。私たちは、自身内部で未来とつながり、それによって、今日と明日の間に橋が架けられます。そのようにして「フューチャーマインド(未来の心)」が生まれます。未来意識です。

正しく実行すると、フューチャー・インテリジェンス(未来知性)のようなものが生成されます。私たちは、外部の「出来事」だけでなく、変化した世界に反応する内部の適応も予見することができます。

それは、断定的な性質のなかに常に死物性や非創造性を持ったPrognosis(予測)とはまったく異なった感じを受けます。私たちは、恐怖のこわばりを抜け出し、生き生きとしたものに再び戻るのです。真の未来に必ず付随する生命の活力に。

私たちは皆、恐怖をうまく克服した気持ちを知っています。治療のために歯科医に行くとき、私たちはそのずっと前から怖がっています。歯科医の椅子に座った途端にコントロールを失い、痛む前に痛いと感じます。私たちは、この気持ちの予見のなかで、私たちを完全に圧倒する恐怖の渦のなかに入り込んでいきます。しかし、治療を終えると、克服感がやってきます。世界は再び若くて新鮮に見え、私たちは突然行動への熱意に満たされます。

この「克服」とは、神経生物学的には、恐怖のアドレナリンが、ドーパミンに置き換えられることです。このドーパミンは、体内にある一種の未来薬物です。アドレナリンが私たちに逃げるか戦うかの指揮を取っている間(歯医者の椅子でもコロナとの戦いでも、これは実際には生産的ではありません)、ドーパミンは私たちの脳シナプスを開きます: これからやって来るものにワクワクします。好奇心をもって、前向きに。ドーパミンの量が健全なレベルに達したら、私たちは計画を作り上げ、前向きな行動に導くビジョンを持つことができます。

驚くべきことに、多くの人がコロナ危機でまさにこれを経験しています。 激しいコントロールの喪失から、突然、ポジティブなものへの興奮に変わります。 困惑と恐怖の期間の後、内面のパワーが生じてきます。 世界は「終わり」ますが、私たちがまだそこにいるという経験の中で、一種の新しい存在が個々の内部に発生します。

文明閉鎖の真っ只中、私たちは森や公園を通り抜けたり、空っぽの広場を横切ったりします。しかし、これは黙示録ではなく、新たな始まりです。

変遷は、期待や認識、世界のつながりが変化したモデルとして始まります。その際、私たちの従来の未来感覚を呼び起こす慣れ親しんだ熟練動作の崩壊もあるでしょう。全てが全く違ったものになる、以前よりより良いものにもなるかもしれないという想像と確信。

トランプ氏が11月に落選することに驚くかもしれません。悪意のある、分断的な政治はコロナの世界に適合しないため、AFD(ドイツの右派ポピュリズム政党)は、深刻なほつれ現象を示しています。人々を扇動し対立を生みだす人間は、未来に関する本当の問いにまったく貢献できない、ということが、コロナ危機により明らかになりました。深刻な状況になると、ポピュリズムの中に潜む破壊性が明瞭になります。

社会的責任の形成としての本来の意味での政治は、この危機に、新しい信頼性、新しい正当性を獲得しました。「権威主義的」に行動しなければならなかったからこそ、政治は公共への信頼を生み出しました。科学もまた、この厳しい試練のなかで、驚くべきルネッサンスを経験しました。ウイルス学者と疫学者はメディアのスターになりました。以前は二極化論争の傍らにいた「未来派」の哲学者、社会学者、心理学者、人類学者も、その声と重みを取り戻しました。

フェイクニュースは急速に市場価値を失いました。陰謀論も、酸っぱいビールのように提供されたにもかかわらず、いつまでも店の棚に売れ残っている商品のようになりました。

進化の加速器としてのウイルス

深刻な危機は、もう1つの基本的な変化の原則を示しています。トレンドとカウンタートレンドの統合です。

コロナの後の新しい世界(というより、「コロナと共にある新しい世界」と言ったほうがいいかもしれません)は、コネクティビティ(接続性)のメガトレンドの混乱から生まれます。政治的にも経済的にも、この現象は「グローバリゼーション」とも呼ばれています。国境の閉鎖、分離、隔壁、検疫隔離は、様々な接続の廃止には繋がりません。私たちの世界を繋ぎ、未来へ運ぶコネクトーム(接続複合体)を再編成するのです。社会経済システムの位相跳躍が起こります。

来たる世界は「距離」を再び高く評価します。それによって、連帯がより質的に形成されます。自律性と依存性、開放と閉鎖のバランスが新しく調整されます。これは世界をより複合的にしますが、より安定させることにもなります。この改変は、広範囲に渡る盲目的な進化のプロセスです。1つ失敗すると、新しい実行可能なものが優勢になります。これにより、最初は動揺がありますが、そのうち内的な意義が見えてきます。パラドックス(逆説的なもの)が新しいレベルで結びつくことで未来持続性が生まれます。

この複合化のプロセス(複雑化と混同しないでください)は、人々が意識的に設計することもできます。来たる複合性の言語を話すことができる人々は、明日のリーダーになるでしょう。希望の星。今後のグレタ。

「コロナを通じて、私たちは生命に対する私たちの全態度を適応させます。他の生命体の真っ只中に生き物として存在するという意味で」

3月中旬のコロナ危機最中のスラボ・ジゼク(スロベニアの哲学者)の言葉です。

すべての深刻な危機は、ストーリーを遺します。遠い未来を指す物語です。コロナウイルスが遺した最も強力なビジョンの1つは、バルコニーで音楽をやるイタリア人です。2番目のビジョンは、人工衛星の画像に写しだされています。中国とイタリアの工業地帯が、突然スモッグのない状態になった映像です。2020年には、人間のCO2排出量が初めて減少します。その事実は私たちに何かをします。

ウイルスがそれを実行できるのであれば、私たちも同じことを実行できるのでは?もしかしたらウイルスは、未来からやってきた単なるメッセンジャーかもしれません。彼の抜本的なメッセージは次の通りです:「人間の文明は、密度が高すぎ、速すぎ、過熱しすぎている。未来のない特定の方向に暴走している」

でも、それを新しく改変することはできます。
システムリセット。
クールダウン!
バルコニーで音楽!
そうやって未来が成り立ちます。


木々が人間に伝える大切なメッセージ

森は多種多様な生き物が複合的に有機的に絡み合って存続しているエコシステムです。人間も森からたくさんの恩恵を受けています。森の主役は「木」です。質量においても、機能においても。最新の研究(Weizmann Institut of Science in Israel, 2018年)によると、地球上の生物の炭素質量で圧倒的に多いのは植物で、約80%を占めています。その植物質量の大半(約8割)は木です。2位はバクテリアで約13%、3位は菌類で2%。人間も含む動物は0.4 %しかありません。人間だけ取ると0.01%です。木は約3  億年前から地球上に存在しています。それに対して人間(ホモサピエンス)の歴史はたった15万年です。生物質量でも、存続の歴史でも、取るに足らない人間ですが、地球上の生物や環境に多大な影響を与えてきました。とりわけここ100年あまりのインパクトは凄まじいものがあります。そして現在、その活動により自らの存続の危機をもたらしています。

質量の上でも、存続年数でも、人間に遥かに勝る「木」。その木が主役である森という複合的なエコシステムには「賢く」「サステイナブル」な生存コンセプトがあります。だからこそ、地球上でたくさんの面積を有し、長く存続しているのだと推測されます。自然に敬意を払って自然と共に生活していた(している)人間は、森の賢さや持続可能性の断片を経験的に感じていましたが、ここ10年あまりの革新的な植物学の研究により、そのメカニズムが明らかになってきています。木も含む植物は、同種や他の植物種、そして菌類やバクテリア、動物と密なコミュニケーションをしています。学習能力、問題解決能力を持っています。ここに書くのは、森の主役である木の「生きるコンセプト」です。メルヘンではありません。科学的に証明されていることです。

同じ目線のパートナーシップ

木は根から土壌中の養分を吸収していますが、単独ではそれができません。根の先端部分に棲みつく菌類(菌根菌)の助けを借りています。菌根菌は周りのバクテリアに手伝ってもらい、土壌中の栄養分を、木の根が吸収しやすい形に調理して渡します。木はしかし、季節に応じて必要な栄養分が変わります。成長期の春に必要な料理と、休眠期の冬に必要な料理の種類と量は異なります。菌根菌は、木が出す多様な化学物質(分子)のシグナルに反応して、料理のレシピとボリュームを変えているのです。また木の緊急事態にも菌根菌は迅速に対応します。例えば、キクイムシが木に侵入し食べ始めると、木は防御物質である樹脂(ヤニ)をたくさん生産して自己防衛します。菌は木から送られてきた救急シグナルに迅速に反応し、キクイムシ防御のための樹脂生成用の特別レシピで調理し木に提供します。

その他、病原菌や虫の被害にあったときも同様です。木は症状や事態に合わせて個別のシグナルを菌根菌に送り、菌根菌はそれを正確に受けとり、ドンピシャの対応をします。これらキメ細かで迅速な菌根菌の助けに対して、木は菌根菌やバクテリアに十分なお礼をしています。何でお礼をするかというと、「糖分」と「落ち葉」です。木は、光合成で生成する糖分の約3分の1を菌根菌に提供します。木も菌&バクテリアも、お互いの助けがないと生きていきません。ここで起こっていることは、どちらか一方が他方を搾取するのではない、同じ目線のパートナーシップです。 

次世代や弱者へのの配慮

木は、自分の子孫への配慮も行なっています。まだ小さく弱く、日陰に生息していて、自分の力だけでは自活できない稚樹に対して、母樹は、自分のパートナーの菌根菌にシグナルを送り、子供へ養分の分配をしています。調理人であり給仕である菌根菌に対して「自分の食事はこれで十分、残りは、まだ十分に貴方とコミュニケーションできない、光合成する力も弱い子供たちに分け与えて欲しい」というお願いをして。また、病気で弱っている、枯れかけている仲間の木に対しても同様の配慮をしていることも観察されています。

光と土壌に対する過酷で冷酷な競争が、同種間や異種間で存在するのも事実ですが、一方でこのような次世代や弱者へのいたわりと配慮も同時に行われています。

連帯して問題解決

木は仲間と連帯し、危機的な状況を回避したり、脱っすることもします。例えば、キクイムシに食われた木は、「今自分がやられた。仲間よ、お前たちも素早く自己防衛対策したほうがいい」と周りの木々に対して空気を媒介にフェロモンの信号を送ります。それを受け取った木々は、自分の根に棲みつく菌根菌に、特別料理を注文し用意させて食し、猛スピードで樹脂生産し、それを樹皮部分に集め防御体制を整えます。木が生成するフェロモンには様々な種類、すなわち様々な言葉があります。仲間だけでなく、昆虫や鳥などにも明確な信号が送られます。益虫または益鳥として、自分を蝕む菌やムシを退治して欲しい時に。

また夏の日照りで乾燥が続いたときは「節水が必要だ!」と、森の木々みんなで信号を出し合い、連帯して光合成の生産量を減らし、水不足に対応します。またそのような問題が数年続いたときは、葉っぱを小さくする、という戦略の変更までして将来に備えます。これは生物学的に言うと、親から受け継いだ遺伝子コードに自ら修正を加える、という偉業です。これまで特別なノウハウと機械設備を備えた遺伝子学者・技術者にしかできないと思われていたことです。植物は、普通の人間には到底できないことを、生き残るために必要とあれば、一個体の一生の中でやってのけるのです。

人間が木や森から学ぶべきこと

人間の約2000倍も長く地球上に存続し、人間の約7000倍の質量を有する木々、その木が主役の森という生命複合体に対して、人間は、多大な畏敬の念をもって、木や森が発する言葉に耳を傾けるべきです。そこには、人間が、他の生物と一緒に地球上で生き延びるための大切なメッセージがあると私は感じています:

  • 明快で迅速でオープンなコミュニケーションを! 意地や誇り、羞恥心やエゴは捨てて、みんなのために情報の提供を!
  • 与えてもらったら、その分しっかり返してお礼する。同じ目線の敬意あるパートナーシップを!
  • 次世代や弱者にしっかり配慮しよう!
  • 問題や危機は、みんなで連帯して解決! 個人プレイは禁物!
  • 先代の経験や歴史、自らの経験から学び、適切な決断と行動を! 必要あらば、生きる戦略の変更もし、未来に備えよう!

記事に関係する代表的な学術論文:

Yinon M. Bar-Ona, Rob Phillipsb,c, and Ron Miloa (2018): The biomass distribution on Earth. PNAS Vol.115, No.25

František Baluška, Stefano Mancuso, Dieter Volkmann1& Peter Barlow (2004): Root apices as plant command centres: the unique ‘brain-like’ status of the root apex transition zone. Biologia, Bratislava, 59/Suppl. 13

Florian Walder, Helge Niemann, Mathimaran Natarajan, Moritz F. Lehmann, Thomas Boller, and Andres Wiemken (2012): Mycorrhizal Networks: Common Goods of Plants Shared under Unequal Terms of Trade. Plant Physiology, 2012 June, Vol. 159

A. Ekblad, Et. al. (2013): The production and turnover of extramatrical mycelium of ectomycorrhizal fungi in forest soils: role in carbon cycling. Plant Soil (2013) 366:1–27

Louise M. Egerton-Warburton, Jose ́ Ignacio Querejeta, Michael F. Allen (2007): Common mycorrhizal networks provide a potential pathway for the transfer of hydraulically lifted water between plants. Journal of Experimental Botany, Vol. 58, No. 6

Rodica Pena, Andrea Polle (2014): Attributing functions to ectomycorrhizal fungal identities in assemblages for nitrogen acquisition under stress. The ISME Journal (2014) 8

František Baluška, Stefano Mancuso, Dieter Volkmann, Peter Barlow (2009): The ‘root-brain’ hypothesis of Charles and Francis Darwin – Revival after more than 125 years. Plant Signaling & Behavior 4:12