「多様性」〜人と森のサステイナブルな関係 (書籍)

《多様性》をキーワードに、「森づくり」から「地域木材クラスター」「モノづくりと人づくり」「森のレジャー」「森の幼稚園」さらには最新の脳神経生物学に基づいた「文明論」まで、私が過去20年の間で経験したことを軸に、多面的にわかりやすく論じています。


客観的かつ主観的に書きました。


科学的なデータや知見を踏まえた専門書ですが、同時に、《多様性》に魅了されてきた私の経験や思いがベースにあるエッセイでもあります。


思いもよらず、「さなぎ」のような静かな生活を強いられた、この1年。過去を振り返り、今後の自分の生き方を考える時間とモチベーションを得ることができました。


まず、自分のために書きました。次に、子供たちの未来のために。


「森の国」ドイツから「森林大国」日本の未来へ贈る、多様性のメロディです。


専門家や業界人に限らず、広く一般の方に読んでもらいたいと思っています。


森の仲間が増えることを願って。


https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

目次

はじめに ~「多様性」に導かれて

第1章 気くばり森林業

「林」と「森」
明治のパイオニアたちがドイツから持ち帰ったもの
私が「森林学」から学んだ大切なこと
次世代への想いやりから生まれた概念「サスティナビリティ」
世代間の契約
時代の異端児 ガイヤーとメラー
将来の木
人と森をつなぐ道

第2章 日本でこそ森林業を!

ヨーロッパの人たちが羨む「豊かさ」と「多様さ」
日本が持っている宝物の「量」と「質」
日本の森に「新・幹線」
将来木施業と狩猟で「林」を「森」に!

第3章 地域に富をもたらす多様な木材産業

多様な原木は、多様な製材工場を求む
「連なる滝(カスケード)」と「葡萄の房(クラスター)」
優秀な職人を育てる仕組み ~マイスターは現場の先生
木という素晴らしい素材が使える喜び
木で音をつくり、世界へ出かける職人

第4章 生活とレジャーの場としての森林

いつでも気軽に「Shinrin-Yoku」を!
「生きた里山」が観光資源
森の幼稚園

第5章 多様性のシンフォニー

樹木たちの声を聞く
脳のコーヒレント
「結びつき」と「探索」
心の羅針盤
尊厳

あとがき・謝辞

参考文献

【アナログ版(印刷本)の販売サイト】
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

【電子書籍の販売サイト】

Apple Books (iPhone, iPad, Macbook, iMac等のマック端末のみ)
http://books.apple.com/jp/book/id1558364309

Rakuten Kobo(android, windows, iOS, MacOS)
https://www.kobo.com/jp/ja/ebook/0UaU6wod4jiulKiAgble1A

Amazon Kinlde (android, windows, iOS, MacOS)
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B08ZCSLL1C

日本の森林は繊細な「緑のインフラ」

世界中で長雨や集中豪雨による水害が増えています。私が住む中央ヨーロッパの山岳地域は雨量も平地より多く、水害のリスクが高い地域で、また山岳の森は、下流域の洪水を防ぐ、もしくは抑制するための重要な機能があります。健全な森林を維持発展させることが、人工構造物による技術的な対策と同様に重要であることは、80年代より独/墺/スイスのアルプス地域を中心に行われている複数の研究データが明示しています。

とりわけ「豊かな土壌」が洪水抑制のカギだとされています。例えば、多様で元気な混交森のミミズがたくさん生息するふかふかの土壌は、1時間50mmの集中豪雨も問題なく受け止めることができます。

日本は世界が羨む森林大国で、太陽にも水にも土壌にも恵まれた、森林にとって絶好の環境があります。日本の森林は、高い保水・貯水能力を発揮できるポテンシャルがあります。「緑のインフラ」です。技術的インフラであるダムや堤防と少なくとも同等に捉えるべきものです。技術的インフラとの大きな違いは、絶えず遷移していく生命複合体であることです。

急峻で崩れやすい地形と地質が多い日本の森林は、繊細な感覚で扱わなければなりませが、うまく自然の発展を後押しすることができれば、緑のインフラとしての機能を向上させ、恒久的に維持することができます。人工物のような劣化や寿命はなく、大きな補修や改修やリニューアル費用がかかりません。

Sustainable Diversity 持続可能な多様性

「木材」は分散して存在し、多様な遺伝子や土地の環境、生物間の相互作用が作り出す、一つとして同じものがない「多様」な素材。「大きいほど効率がいい」というメルヘン、同じものを大量に生産することで経済効率性を求める手法が、木材という分散して存在する多様な資源の有効な活用には適さないこと、限界があることに多くの人々が気づいています。地域の経済を支える森林木材クラスター。リーマンショックや今回のコロナショックで、危機に対する柔軟さ、強さを示しているのは「小規模」で「多様性」のあるプレイヤーです。小規模で多様なものが、森の生命複合体のように有機的に繋がって成り立っている構造です。大きなリーダーや大きな資本や会社に頼る、という一種「楽」で「快適」な「硬直」したソリューションではなく、多様性ある小さなプレイヤーが有機的に相互作用して「流動的」にクラスターを形成・編成していくことが、地域の持続可能な発展に繋がると思います。

9月末〜10月末のオンラインセミナー

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ】
村上敦
2020年9月24日(木) 20-21:30 
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ】
滝川薫
2020年9月29日(火) 20-21:30
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?】
池田憲昭
2020年10月1日(木) 20-21:30
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

集約版 ①森林業+②新森道+⑥森林浴+⑦共生】
2020年 10月5日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldmix1005.peatix.com
2020年 10月17日(土) 16:00-18:00
https://sustainable-waldmix1017.peatix.com

【集約版 ③森林作業+④木材クラスター+⑤自然素材の建築】
2020年 10月13日(火) 20:00-22:00
https://sustainable-holzmix1013.peatix.com
2020年 10月25日(日) 17:00-19:00
https://sustainable-holzmix.peatix.com

【球磨川地域支援の特別企画 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】2020年 10月15日(木) 18:00-20:30
https://sustainable-kumagawa.peatix.com


【森の幼稚園からBeyond コロナ】
2020年 10月19日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldkinder-corona.peatix.com

オンラインセミナー「サステイナブルは気くばり」2020年9月ラインナップ

グリーンインフラ、Beyond コロナ、ユネスコ文化遺産とSDGs、農業、手工業、エネルギー、エコタウン、ビオホテルと新しいテーマも加え、9月のオンラインセミナーをラインナップしました。

ドイツ/スイスで同様の活動をする同僚の村上敦(9月24日「エコタウン」)と滝川薫(9月29日「ビオホテル」)との共同企画もあります。

興味がある方、プロ、アマ関係なく、お気軽にご参加ください。

2020年 9月5日(土)20:00-22:00
サステイナブルは気くばり - 森から建物まで
集約版 ⑩+⑪ 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」
https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

2020年 9月11日(金) 20:00-21:30
With コロナの世界からBeyond コロナの世界を眺望する
https://sustainable-withcorona-beyondcorona.peatix.com

2020年 9月15日(火) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.1「三段酪農によるチーズ作り」
https://sustainable-unesco-dreistufenlandwirtschaft.peatix.…

2020年 9月16日(水) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.2「オルガン製作」
https://sustainable-unesco-orgelbau.peatix.com

2020年 9月17日(木) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.3「共同組合」
https://sustainable-unesco-genossenschaft.peatix.com

2020年9月24日(木)20:00-21:30  村上敦
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

2020年9月29日(火)20:00-21:30  滝川薫
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

2020年10月1日(木)20:00-21:30  池田憲昭
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

オンラインセミナーの案内

【集約版:国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】

8月31日(月)

https://sustainable-greeninfra-wald-boden1.peatix.com

9月1日(土)

https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

森と土は、多大で多面的な恩恵みを人間に与えています。その多種多様な恩恵のなかで、今日大きな意味を持ってきているのが、災害や気候変動を防止抑制する機能、すなわち人の命と健康と財産を守ってくれる「国土保全機能」です。

人間は太古の昔から、森と土の恵みである木材や動植物を利用してきましたが、その利用手法や実態は、残念ながら、過去においても、現在においても、森や土の「国土保全機能」を低下させるものがほとんどです。一方で、森や土の国土保全機能を維持もしくは向上させる持続可能な森林業や農業の手法や実践もあります。

このテーマは、森も土も豊かであると同時に壊れやすい環境(雨が多い気候や地質・地理条件)にあり、人口密度が高い日本においてとりわけ重要です。

本セミナーでは、国土保全機能の中の「洪水防止・抑制」と「CO2固定」に焦点を当て、森や土がいかに大切か、科学的な研究データに基づいてわかりやすく話し、人間が生産活動をする際にどのような「気くばり」が必要かを明示します。

7月半ばから8月初めにかけて2回に渡って話したものを、1つのレクチャーに集約したものです。前回好評でしたし、とりわけ日本にとって大切なテーマなので、再度「集約版」として提供します。聴き逃された方、ご興味がある方、お気軽にどうぞ!

森づくり、土づくりによる防災

7月に熊本の球磨川流域の洪水の映像を見て、「また熊本か」と同じ九州の長崎県出身者として心が痛みました。

ここ10年、森林の専門家として、とりわけ急峻で多雨の日本において、森林のマネージメント手法と洪水の因果関係を科学的に検証することを訴えてきました。

熊本は皆伐施業が多い地域で、洪水のあとネットで検索したところ、2007年の研究論文ですが、熊本県の皆伐の約7割が球磨川流域に集中している、というデータがありました。
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/…/60/bin090514192417009.pdf…

豊かな森林とそれによって生成される豊かな土壌は、健全な状態では多大な保水・貯水能力があります。皆伐は、その能力を、最悪の場合、長期にわたって大きく減少させるものです。皆伐だけでなく、鹿の食害の問題や、樹種構成、道路、コンクリート建造物など。様々な洪水の要因はあります。今回のような想像を超える集中豪雨では、健全で理想的な森林であっても災害を防ぐことはできなかったかもしれませんが、被害のスピードと規模をある程度抑制することはできたと思います。

未来のために、科学者、市民、企業、政治、行政が、真剣に取り組むべき課題です。

8月31日と9月5日に行うオンラインセミナーでは、このことをメインに話します。世界共通の課題ですが、とりわけ日本にとって大切なテーマです。

【集約版:国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】
8月31日(月)
https://sustainable-greeninfra-wald-boden1.peatix.com
9月5日(土)
https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

写真は、1828年にヨーロッパで出版された、皆伐と災害の因果関係を分析し論じている学術論文の表紙です。古書ですが、先月、バイエルン州立図書館のHPから電子データで全ページ無料でダウンロードして入手しました。

多機能森林業の基礎を築いた人

19世紀初頭に、ドイツ森林学のパイオニアの1人、ヴィルヘルム・ファイルという偉人が、生徒たち(森林官の卵)に次のようなことを言っています:

「木にどう育てられたいか聞きなさい。本を読むよりよっぽどいいことをお前たちに教えてくれるはず」

「すべての理論はグレー、森と経験だけがグリーン」

プロイセンのエーバースバルデ林業大学の初代学長を務めたファイル氏は根っからの実践家、現場の人間でした。トウヒやマツなど成長のいい樹種を一斉に植えて土地から最大収益を得る視野の狭い畑作的林業の風潮が強まっていたなか、土地に合った樹種を育てること、机上の理論より現場の観察や経験がより大事であること、林業経営という狭い視野から脱して森林の国民経済と社会生活への寄与を考える必要があること、などを訴え教え、現在の「多機能森林業」の基礎の一つを築いた人です。

私も現場が好きで、普段はドイツや日本でのワークショップやセミナーでも、できるだけ参加者が森林を五感で体験できるようにオーガナイズしています。

しかし今年のコロナ情勢、それができませんので、春からオンラインセミナーを始めました。5/6月に第一走を好評にて終え、7月19日から第二走を開始します(8月半ばまで)。

緑いっぱいの生命の力が溢れた夏の森林での生の体験は提供できませんが、オンラインにて、その息吹を、包容力を、森林に携わる人たちのスピリットをお伝えできればと思っております。

複合的に考え、多面的にバランスの取れたソリューション

20年前、私は岩手大学でドイツ文学をかじったあと、ドイツのフライブルク大学で「森林学」を学びました。森林官(フォレスター)を養成するカリキュラムです。経営学、政治学、法律、歴史、地質、土壌、地理学、気象学、化学、生物、生態学、狩猟学、樹木生理学、造林学、樹木計測、統計学、木材利用学、人間作業工学、木材工学、森林土木、環境教育、ランドスケープ学、自然倫理、、、と「多様性」ある内容を5年半みっちり実学重視で学びました。当時は講義とセミナーは全て1週間から2週間のブロック(集中講義)形式で、ハードでしたがフィールド学習が多く楽しく学べました。

複合的に物事を捉え、多面的にバランスの取れたソリューションを考え実践するトレーニングを受けました。これは私の大きな財産で、現在の活動のベースになっています。いろんな分野の専門家と専門用語で話せることも「多様性」ある森林学を学んだことの大きな利点です。

私はなりませんでしたが、森林官(フォレスター)は、ドイツの子供達の憧れの職業の一つ。森林官にとって大切な仕事は、森を「クリエイト」すること。その中心的な作業は「選木」です。残す木、切る木を選ぶ作業ですが、この作業で将来の森の方向づけ、価値創出をしていきます。選木作業では、森林官の頭のCPUは、樹木生理、生態バランス、自然保護、防災、作業手法、木材産業の需要、売値、作業コスト、など多面的な知識と経験が複合的に高速でフル稼働し絡み合い、同じものは一つとない一つ一つのソリューションを導き出していきます。

木々の「言葉」が人間を癒す

森の樹木たちは、揮発性オイルというフェロモンを使って、自分の仲間の樹木や他の植物、昆虫などと密な交信をしています。このフェロモンの信号は樹木の「言葉」。木はメッセージに合わせて様々なフェロモン単語(=炭素化合物のバリエーション)を持っています。一つの森で200単語くらい、世界中の森林合わせると2000単語くらいあります。人や地域によって多様な方言や言語がある人間世界と同じ様に。

そして、その木々が話す多様な言葉(=多様な揮発性オイル)が、人間の心身の健康に優れた効用があることが、ここ30年あまりの、日本をはじめとした「森林浴」の医学的研究によって解明されてきています。木々が発する言葉やメロディが人間を癒す。まるでおとぎ話の世界のようですが、科学的な事実になりつつあります。