日本の森林は繊細な「緑のインフラ」

世界中で長雨や集中豪雨による水害が増えています。私が住む中央ヨーロッパの山岳地域は雨量も平地より多く、水害のリスクが高い地域で、また山岳の森は、下流域の洪水を防ぐ、もしくは抑制するための重要な機能があります。健全な森林を維持発展させることが、人工構造物による技術的な対策と同様に重要であることは、80年代より独/墺/スイスのアルプス地域を中心に行われている複数の研究データが明示しています。

とりわけ「豊かな土壌」が洪水抑制のカギだとされています。例えば、多様で元気な混交森のミミズがたくさん生息するふかふかの土壌は、1時間50mmの集中豪雨も問題なく受け止めることができます。

日本は世界が羨む森林大国で、太陽にも水にも土壌にも恵まれた、森林にとって絶好の環境があります。日本の森林は、高い保水・貯水能力を発揮できるポテンシャルがあります。「緑のインフラ」です。技術的インフラであるダムや堤防と少なくとも同等に捉えるべきものです。技術的インフラとの大きな違いは、絶えず遷移していく生命複合体であることです。

急峻で崩れやすい地形と地質が多い日本の森林は、繊細な感覚で扱わなければなりませが、うまく自然の発展を後押しすることができれば、緑のインフラとしての機能を向上させ、恒久的に維持することができます。人工物のような劣化や寿命はなく、大きな補修や改修やリニューアル費用がかかりません。

Sustainable Diversity 持続可能な多様性

「木材」は分散して存在し、多様な遺伝子や土地の環境、生物間の相互作用が作り出す、一つとして同じものがない「多様」な素材。「大きいほど効率がいい」というメルヘン、同じものを大量に生産することで経済効率性を求める手法が、木材という分散して存在する多様な資源の有効な活用には適さないこと、限界があることに多くの人々が気づいています。地域の経済を支える森林木材クラスター。リーマンショックや今回のコロナショックで、危機に対する柔軟さ、強さを示しているのは「小規模」で「多様性」のあるプレイヤーです。小規模で多様なものが、森の生命複合体のように有機的に繋がって成り立っている構造です。大きなリーダーや大きな資本や会社に頼る、という一種「楽」で「快適」な「硬直」したソリューションではなく、多様性ある小さなプレイヤーが有機的に相互作用して「流動的」にクラスターを形成・編成していくことが、地域の持続可能な発展に繋がると思います。