「多様性」〜人と森のサステイナブルな関係 (書籍)

《多様性》をキーワードに、「森づくり」から「地域木材クラスター」「モノづくりと人づくり」「森のレジャー」「森の幼稚園」さらには最新の脳神経生物学に基づいた「文明論」まで、私が過去20年の間で経験したことを軸に、多面的にわかりやすく論じています。


客観的かつ主観的に書きました。


科学的なデータや知見を踏まえた専門書ですが、同時に、《多様性》に魅了されてきた私の経験や思いがベースにあるエッセイでもあります。


思いもよらず、「さなぎ」のような静かな生活を強いられた、この1年。過去を振り返り、今後の自分の生き方を考える時間とモチベーションを得ることができました。


まず、自分のために書きました。次に、子供たちの未来のために。


「森の国」ドイツから「森林大国」日本の未来へ贈る、多様性のメロディです。


専門家や業界人に限らず、広く一般の方に読んでもらいたいと思っています。


森の仲間が増えることを願って。


https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

目次

はじめに ~「多様性」に導かれて

第1章 気くばり森林業

「林」と「森」
明治のパイオニアたちがドイツから持ち帰ったもの
私が「森林学」から学んだ大切なこと
次世代への想いやりから生まれた概念「サスティナビリティ」
世代間の契約
時代の異端児 ガイヤーとメラー
将来の木
人と森をつなぐ道

第2章 日本でこそ森林業を!

ヨーロッパの人たちが羨む「豊かさ」と「多様さ」
日本が持っている宝物の「量」と「質」
日本の森に「新・幹線」
将来木施業と狩猟で「林」を「森」に!

第3章 地域に富をもたらす多様な木材産業

多様な原木は、多様な製材工場を求む
「連なる滝(カスケード)」と「葡萄の房(クラスター)」
優秀な職人を育てる仕組み ~マイスターは現場の先生
木という素晴らしい素材が使える喜び
木で音をつくり、世界へ出かける職人

第4章 生活とレジャーの場としての森林

いつでも気軽に「Shinrin-Yoku」を!
「生きた里山」が観光資源
森の幼稚園

第5章 多様性のシンフォニー

樹木たちの声を聞く
脳のコーヒレント
「結びつき」と「探索」
心の羅針盤
尊厳

あとがき・謝辞

参考文献

【アナログ版(印刷本)の販売サイト】
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

【電子書籍の販売サイト】

Apple Books (iPhone, iPad, Macbook, iMac等のマック端末のみ)
http://books.apple.com/jp/book/id1558364309

Rakuten Kobo(android, windows, iOS, MacOS)
https://www.kobo.com/jp/ja/ebook/0UaU6wod4jiulKiAgble1A

Amazon Kinlde (android, windows, iOS, MacOS)
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B08ZCSLL1C

【KANSO建築 構造見学会】

 参加費無料11月21日(土)午後、秋田県仙北郡にて「KANSO」建築の見学会を開催します。「KANSO」は、スイスの建築家 サシャ・シェアと、日本の建築家 佐藤欣裕(もるくす建築社)と ドイツ在住の池田憲昭(私)がチームを組んで昨年から準備してきたものです。

日本でのKANSO実験棟が現在、もるくす建築社の新オフィス「美郷アトリエ」として建設されています。21日は、立ち上げが終了し、断熱施工中の予定です。

KANSOは、名前のとおり、自然素材を使い、シンプルな構造、機械設備をできるだけ使わなくて済むシンプルなソリューションです。暖房も冷房も機械換気も、おそらくレンジフードも使う必要がない、年中快適な室内環境を保てる建物を設計、建設しています。その秘訣は、質量のある自然素材の躯体をベースに、蓄熱(調熱)、調湿、消臭、除菌、という自然素材が持つ多面的な機能を効果的に活用することです。

案内はこちら
https://www.kanso-bau.com/fileadmin/Medien/Download/20201121_KANSO_Event.pdf

スイスの建築家のシェアとドイツの池田は、当日ZOOMにて現場と繋がります。

9月末〜10月末のオンラインセミナー

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ】
村上敦
2020年9月24日(木) 20-21:30 
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ】
滝川薫
2020年9月29日(火) 20-21:30
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?】
池田憲昭
2020年10月1日(木) 20-21:30
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

集約版 ①森林業+②新森道+⑥森林浴+⑦共生】
2020年 10月5日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldmix1005.peatix.com
2020年 10月17日(土) 16:00-18:00
https://sustainable-waldmix1017.peatix.com

【集約版 ③森林作業+④木材クラスター+⑤自然素材の建築】
2020年 10月13日(火) 20:00-22:00
https://sustainable-holzmix1013.peatix.com
2020年 10月25日(日) 17:00-19:00
https://sustainable-holzmix.peatix.com

【球磨川地域支援の特別企画 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】2020年 10月15日(木) 18:00-20:30
https://sustainable-kumagawa.peatix.com


【森の幼稚園からBeyond コロナ】
2020年 10月19日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldkinder-corona.peatix.com

オンラインセミナー「サステイナブルは気くばり」2020年9月ラインナップ

グリーンインフラ、Beyond コロナ、ユネスコ文化遺産とSDGs、農業、手工業、エネルギー、エコタウン、ビオホテルと新しいテーマも加え、9月のオンラインセミナーをラインナップしました。

ドイツ/スイスで同様の活動をする同僚の村上敦(9月24日「エコタウン」)と滝川薫(9月29日「ビオホテル」)との共同企画もあります。

興味がある方、プロ、アマ関係なく、お気軽にご参加ください。

2020年 9月5日(土)20:00-22:00
サステイナブルは気くばり - 森から建物まで
集約版 ⑩+⑪ 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」
https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

2020年 9月11日(金) 20:00-21:30
With コロナの世界からBeyond コロナの世界を眺望する
https://sustainable-withcorona-beyondcorona.peatix.com

2020年 9月15日(火) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.1「三段酪農によるチーズ作り」
https://sustainable-unesco-dreistufenlandwirtschaft.peatix.…

2020年 9月16日(水) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.2「オルガン製作」
https://sustainable-unesco-orgelbau.peatix.com

2020年 9月17日(木) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.3「共同組合」
https://sustainable-unesco-genossenschaft.peatix.com

2020年9月24日(木)20:00-21:30  村上敦
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

2020年9月29日(火)20:00-21:30  滝川薫
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

2020年10月1日(木)20:00-21:30  池田憲昭
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

昔の建物は過剰設計?

今でも残っている築数百年の昔の建物は、分厚い壁、太い柱や梁など、マテリアルがふんだんに使われています。厳密な構造計算がなかった時代なので「これくらい使えばまず大丈夫だろう」という感覚や、建て主の見栄や権力誇示の目的で、そのようなマテリアルを「贅沢」に使用した建物が建てられています。日本でも寺院や大きな蔵、お城、明治のころの赤レンガの建物などはそうです。
現代の構造設計の基準からすると、確かにマテリアルの「無駄遣い」で「過剰設計」です。しかし、木や土や石がもつ高い「蓄熱(=調熱)」の性能の観点からは、大きな意味があります。省エネに繋がります。また自然のマテリアルが持つ湿度のバランスを取る「調湿」の性能も、建物の耐久性や人間にとっての快適さや健康に大きく寄与します。
断熱偏重で、軽量、できるだけ低コスト、機械設備に頼って室内環境を整える、という現代建築のメインストリームがあるなかで、それらに疑問をもったり、過去の失敗を反省する建築業者が現れています。昔の建築の良さ、自然のマテリアルの優れた性能を再発見し、健康で省エネの建物を作る事例も少しづつ増えています。
マテリアルは「過剰?」に使い、そこでお金がかかります。しかし、それによって、暖房や冷房設備も機械換気も必要なく、断熱材もわずかで済み、その部分で建設コストの節約ができ、さらにランニングコストが大幅に安くなります。全体のバランスを見ることが大切です。

建築:自然素材が持っている包容力と問題解決能力

省エネの建築というと、「断熱」と「気密」が合言葉になっています。しかし一方で、古代から使われてきた自然素材の優れた性質があります。それは「蓄熱(調熱)」「調湿」です。自然の素材である「木」や「土」が持っている熱と湿度のバランスを取る機能、調整する機能は、人間よりもはるかに長く存続している自然のもっている「包容力」であり「問題解決能力」です。

現代人は、問題があるとテクノロジーに頼りがちです。テクノロジーが何でも解決するという迷信や傲慢さが、さらなる問題を生み出しているケースも多々あります。

自然を活かした、自然と共にの哲学による、シンプルで賢い、テクノロジーを使わないで済むソリューションが、建築の分野にもあります。
調熱と調湿を備えた断熱と気密が、持続可能な省エネで健康な建築のソリューションになります。

オンラインセミナーを開始します

これまで、現地の視察セミナーや講演会、ワークショップにて「直接対面」にて限られた方々に提供していたものを、ウェビナーにより「デジタル対面」にて、より多くの方々に安価に提供します。

通信環境の良い場所で、パソコンやタブレット、スマホで、気軽に会社や自宅や外出先からアクセスください。

ZOOMのウェビナーのシステムを使います。基本的に、視聴参加者のお名前は、他の視聴参加者の画面には表示されません

参加のお申込み&お支払いのマネージメントにはPeatixを使用します。お申し込み後に、Zoomの参加者事前登録URLを送ります。登録が終了すると、オンラインセミナーへの参加リンクが記載されたメッセージが自動送信されます。各セミナーは開始20分前に開場します。

別の参加&申し込み方法をご希望の方は、事前に個別にお問い合わせください。メールはこちらへ

下記は、公募型オープンセミナーの案内です。

テーマに関心をお持ちの方でしたら、一般の方からプロまで、どなたでもお気軽にご参加ください。動画写真ホワイトボードも効果的に使い、素人の方でも容易に理解・イメージできるように話します。レクチャーの後には、口頭による質疑応答の時間を設けます。聴講参加者のみなさまには、セミナー終了後にスライドのハンドアウトを配布します。ご質問、ご不明な点がございましたら、遠慮なくご連絡ください。メールはこちらへ

団体、企業などでご要望がありましたら、オーダーメイドにて、クローズなセミナーの開催にも応じます。ご希望内容、期日など、お気軽にお問い合わせください。メールはこちらへ

サステイナブルは気配り ー 森から建物まで  1)〜7)

 

1)持続可能な多様性! ー 多方面へ「気配り」する森林業

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 「持続可能性」という概念は、ドイツの森林業の世界で約300年前に生まれた
  • 次世代への配慮と思いやりの心が、多方面への「気配り」のある森づくりを生む
  • 森林業とは? ー 「自然と共に」「循環の思想」「多機能性」
  • 土壌を守り育てる! ー 森林業のもっとも重要な資産
  • 欧州のフォーレスターが羨む森林大国日本の大きなポテンシャル
  • 「ソロ」ではなく「協奏」! ー ドイツやスイス、日本の実証事例とパイオニア

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月14日(木) 17:00-18:30   
2020年 5月16日(土)  16:00-17:30
2020年 5月26日(火) 20:00-21:30 

2) 森づくりは道づくり ー 持続可能で多機能な森林業を可能にする道インフラ

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 自然に「気配り」した質の高い道のインフラが、生産性の高い持続可能な森林業を支える
  • いい道のインフラは、森林作業の安全性を向上させ、人の命を救う!
  • 多雨、急傾斜、複雑な地形、崩れやすい土質の日本の森林でも可能!
  • 「水」とどう付き合うか ー 集めない、加速させない、停滞させない、という3原則
  • グリーンインフラになる道づくりのディテール
  • 美しい森林道は、観光業と市民のレジャー・健康を支える!

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月19日(火) 17:00-18:30 
2020年 5月23日(土)  16:00-17:30
2020年 5月28日(木) 20:00-21:30 

3)人も森も守る! ー 森林作業の安全と土壌を保護する作業

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 危険な仕事「森林作業」に必要な心構え ー 「敬意」「気配り」「謙遜」
  • マイスター(先生)が現場で徒弟(生徒)に教えることの大切さ
  • 防護装備 ー 鎧とスポーツウェアーのバランス
  • 人命救助が出来る道を起点に作業を考える
  • 土壌を保護する森づくりと作業システム

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月20日(水) 19:00-20:30 
2020年 5月24日(日)   15:00-16:30

4)木材の多様な地産地消 ー 多様性のある地域木材産業が地域を国を豊かにする

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 木は「多様」、だから多方面への「気配り」がある多様な木材産業が必要!
  • 森林・木材クラスターは、地域経済を支える大きな柱!
  • 製材工場 ー 「気配り」力が問われる森と木材産業のつなぎ役!
  • 地域を国を豊かにする理想的な木材のロジスティック
  • 家づくり ー地域の零細企業が支える品質とイノベーション
  • 手工業のルネッサンス ー 家具、建具、木工細工
  • 木質バイオマスエネルギーはソリューションになるか?

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月27日(水) 17:00-18:30 
2020年 5月30日(土)   16:00-17:30 

5) サステイナブルな家づくり ー 自然素材を活かしたシンプルな健康省エネ建築

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 木や土や石といった伝統的な自然素材の優れた性能
  • 「調熱」: 熱エネルギーを吸収し放出する自然素材
  • 「調湿」: 湿気を吸収し放出する自然素材
  • 自然素材と衛生 ー 防菌効果
  • 古建築を、安価に、エコに、アップビルディング!
  • シンプル イズ ベスト! ー 自然素材で、暖房も機械換気もいらない年中快適な家

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 6月2日(火) 17:00-18:30
2020年 6月4日(木) 20:00-21:30 
2020年 6月6日(土) 16:00-17:30 

6)森林浴 Waldbaden

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 「森林浴」:日本生まれの言葉がドイツでトレンド
  • 森林業をするための美しく安全な道があるから、市民が気軽に日常的な森林浴
  • 気軽にアクセス可能な「気配り」の森林が、地域の大きな観光資源! ー 「黒い森」の事例
  • 世界からみた日本の森林の大きなポテンシャル
  • ハイブリット自転車で高齢者が森林で快適サイクリング
  • 森林で乗馬、ヨガ、狩猟
  • 「森の幼稚園」 ー 森林は絶好の学びの場

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 6月9日(火) 17:00-18:30 
2020年 6月11日(木) 20:00-21:30
2020年 6月13日(土) 16:00-17:30 

7)人間が森から学ぶべき共生の原則

レクチャー 50分  質疑応答 30-40分  参加費:1000円/人

  • 人間の2000倍長く存続し、人間の7000倍の質量を有する木の賢い生存コンセプト
  • Wood Wide Web
  • 木と他の生物による同じ目線のパートナーシップ
  • 植物が実践する迅速で誠実でオープンなコミュニケーション
  • 木は、次世代や弱者の仲間への配慮をしている
  • 環境に変化に対応し、みんなで一緒に行動する

お申込みは、日時をご確認の上、下記のリンクをクリックください。Peatixの画面に移動します。

2020年 5月22日(金) 19:00-20:30 
2020年 6月10日(水) 17:00-18:30
2020年 6月14日(日) 16:00-17:30

スマホ禁止 −放浪の旅の大工

「我々旅職人は、インターネットができる端末を持ち歩くことが禁止されているんだよ」

現在私は、秋から日本のいくつかの工務店で短期の仕事をする予定のドイツの旅職人6人の来日前の準備サポートをしています。コミュニケーションを円滑に迅速にするために、できれば携帯電話の番号を教えて欲しい、とメールでお願いした私に、一人の旅職人が上記の回答をくれました。彼らと私のここ1ヶ月あまりのコミュニケーションはメール。彼らは、旅先や職場で、誰かに端末やコンピューターを借りるなどして私と交信していたのでした。

中央ヨーロッパには、職人の世界で中世の頃から続く「放浪の旅」の伝統があります。企業と学校がタイアップする3年間の実践的な職業養成システムで「ゲツェレ(職人)」の称号を得た職人さんが、3年+1日間、旅をしながら各地の現場で仕事をし、自分の住む場所とは異なる考え方や技術、文化を学びます。現在でも、大工職を中心に、推定600人が放浪の旅をしています。他の大陸やアジア、中東に出かける職人さんもいます。

旅職人の世界には、伝統的な作業着を着用すること、移動は基本的に徒歩かヒッチハイク、クリスマス以外は故郷の50圏内には戻ってきてはいけない、などのしきたりがあります。苦労をして旅をすること、見知らぬ人とコミュニケーションをすることで、人間性を磨くことも放浪の旅の目的であるからです。

私は、そのような旅職人さんも、スマホは持っているだろうと思い込んでいましたが、冒頭のようにそれが禁止されていることがわかりました。確かに、インターネットが絶えずできる環境だと、いろいろなことが「簡単」に「素早く」できてしまいます。人と直接コミュニケーションを取る機会も減ってしまいます。自分を鍛える機会が減ってしまいます。

私は、特に仕事でインターネットを享受している者です。インターネットがなかったら、2003年に独立してドイツで現在のような仕事をすることはできていないでしょうし、スマホが普及してからは、さらに情報の速さと量が増加しました。

しかし私が岩手大の学生だった90年代はじめは、電話かファックの世界。みんな、話すこと、伝えること、仕事や遊びのプランなど、事前によく吟味して、コミュニケーションをしていたと思います。現在のように、「近くなってからラインかメッセンジャーで連絡を取り合いましょう」といった安全パイはありませんでした。一つ一つのコミュニケーションの精度と配慮の幅、事前の熟考の度合いは、以前のほうが遥かに高かったと思います。旅職人さんとの交流で、大切なことを思い出しました。

岩手中小企業家同友会の会報「DOYU IWATE」2019年10月号に掲載

省エネ建築 ー「対する」でなく、「共に」の原則で

ここ10年来、私はドイツから省エネ建築を紹介してきました。

総エネルギー消費の3割から4割を占める建物でのエネルギー使用量を減らすことは、気候変動防止に大きく貢献しますし、やらなければならないことです。

でも私の心には、絶えずいくつかのわだかまりがありました。

「シートやテープで密閉した、24時間換気装置が回っている家に住みたいか」
と自分に問うと、正直な答えはいつも「No」でした。

「断熱」「気密」「防湿」という言葉にも、正直、親近感を持てませんでした。断つ、密閉する、防ぐ….と何か悪いものに「対抗」「対峙」するようなスタンスだからです。

私の専門は森林で、フライブルク大学の森林学部で、自然に「対抗」するのではなく、自然を「生かし」て、自然と「共に」に行う「合自然的な森づくり」を学びました。その合理性を心から理解し推進している私としては、省エネ建築の分野でも、「対抗」ではなく「共に」の原則でのやり方があるはずだ、と思っていました。

そしてここ2年くらいの間で、一般常識や業界の傾向に捉われずに、革新的なことをやっているエンジニアや事業家に出会い、コンセプトを聞き、その事例を見たことで、答えが見えてきました。

その原則は「蓄熱」と「調湿」です。

蓄熱と調湿性能が高い自然のマテリアル(土や木)を構造、内外装、断熱層にも使うことで、シートもテープも機械換気も必要のない、健康で快適な省エネ建築が可能になります。熱を「断つ」のではなく、冬は太陽光や人の熱放射をマテリアルが「蓄え」て、ゆっくりと放射する、夏は部屋の中で生じた熱を、蓄熱マテリアルが吸収し、室内を涼しくする、という方法です。

カビや建物劣化の原因になる湿気に関しては、湿気の侵入を「防ぐ」のではなく、湿気に「協調性」がある吸湿・放湿性能の高いマテリアルがバッファ機能を発揮し、室内を一定の快適な湿度に保ちます(=調湿)。

自然のマテリアルで、蓄熱、調湿重視の建築をすれば、機械換気の必要性はなくなります。有害物質や湿気が室内にこもることがないからです。人の呼吸に必要な新鮮な空気は、窓のスリット換気や人による窓の開け閉めで取り入れることができます。

このコンセプトで建物をつくっているスイスのある工務店のモデルハウスを昨年訪問しました。その家に実際に住み、一階の半分を事務所としても使用している会社のオーナーが「営業のため、ミネルギープラス(スイスのパッシブ基準)を取得するために機械換気をつけたけど、デモ用で、普段は使っていない。朝と夕方とそれぞれ5分くらい、窓を全開にして換気すればいい」と説明してくれました。「冬でも、このやり方で、熱の損失は問題はない。木がたくさん蓄熱して、その熱放射で暖かかさが保たれているから」と。お客さんにも、機械換気は必ずしも必要ないことを伝えているそうです。

スイスの山岳地域で、蓄熱と調湿の原則で、太陽光を十分に取り入れて、暖房も機械換気もない革新的な建物も存在しています。

蓄熱と調湿、これは別に新しいものではありません。何百年も維持されている昔の建築は、この調湿と蓄熱の原則で成り立っています。シュバルツヴァルトで20年以上、古建築を改修しているスッター社という建設会社があるのですが、古いマテリアルである木や石や土とその蓄熱と調湿の利点を十分に生かし、機械換気が必要ない、快適で省エネの建物を実現しています。

スッター社で一つ興味深い事例があります。ホテル、レストランとして使用されている改修された古建築物。もともと分厚い石壁と土の壁の建物で、その呼吸性能を維持するために壁断熱はしておらず、建物エネルギー証書では年間熱需要が平米あたり100kWhなのですが、実際の熱消費量は約30kWhと、理論的な計算値の3分の1で済んでいます。パッシブハウスに近い性能です。エネルギー需要が高いホテル、レストランで!。

このエネルギー証書上の理論計算値と実際の数字の開きは、スッター社の他の建物でもあるようです。社長のスッターさんは「エネルギー証書は、古建築改修の補助金をもらうために取得している」といい、あまり信用していない様子です。「実際のエネルギー消費は、信じられないくらい低い数字になるから」と。その理由は、数名の建築物理の専門家の見解によると、建物エネルギー証書が、断熱と温度差を主要な基準とした熱力学の理論で計算されているからで、主に量子力学の理論で機能する蓄熱と熱放射が、十分に考慮された計算式になっていないからです。


関連記事:

健康な省エネ建築①-⑤ 
機械換気を使わないソリューション
蓄熱性能
放射熱
窓と太陽光
調湿

ドイツの職人養成 デュアルシステム ④マイスターは現場の教師

中世のツンフト(同業者の組合)が取り仕切っていた手工業職人の養成においては、マイスター(親方)が唯一の教師であった。徒弟は、マイスターと一緒に仕事をしながら、職人試験に必要とされる技能を学んでいた。それだけでない。徒弟の多くは、修行期間中、マイスターの家族の一員として、寝食を共にしていた。マイスターは、仕事でもプライベートでも、徒弟の師匠であった。

今日においては、企業と学校が二元的に見習生(徒弟)を養成するデュアルシステムがあるが、企業で、「現場の教師」として実践的な職人養成を担当するマイスターは、依然としてドイツの職人養成の中核的な存在である。手工業会議所と国が定める職種別の「職業養成規則」に書かれている養成プランに応じて、普段の仕事のなかで、見習生に適切に課題を与え、個々人の特性と性格を見極め、的確にサポートし、見習生が自己学習能力と問題解決能力を身につけるよう促していく。相手は大半が17歳前後の難しい年頃の若者である。教育者としての資質とノウハウが必要とされる。

1800時間のマイスター養成コース

マイスターになるには、ゲツェレ(職人)の資格を取得したあと、最低2年間の職業経験を積んだのち、手工業会議所や国(州)が開催するマイスター養成コースに通い、国家試験を受け合格しなければならない。マイスターコースは、1年から1年半の集中コースや、週末メインの数年に渡るコースなどあるが、授業(講義・実習)時間は、木大工マイスターコースで合計1800時間。技術の理論と実技から経営学、組織マネージメントまで、最高峰の技術者、経営者になるための養成を受けるが、教育者としての知識とノウハウを身につける授業も120時間(5〜6週間)、しっかりと組み込まれている。

マイスター称号は誇りであり、会社の品質表示

「マイスターは空から落ちてくるものではない」という言葉があるが、素質がある優秀な職人が、相当な勉強とトレーニングをし、取得するものである。マイスターは、職人の最高資格者、経営者、教育者として、ドイツの社会では、今日でも高く評価されている。どこの会社でも、経営者や幹部職員が取得した「マイスター証書」が、目立つ場所に誇らしげに掲げてある。会社とその商品、サービスのクオリティを保証し、顧客に信頼感を与えるものであるから。

私は、日本からの視察団とドイツの会社を訪問する機会が多いが、ドイツの経営者が「私の会社には、従業員20人のうち、マイスターが3人いて、見習生が6人います」といった会社紹介をすることがよくある。それは「自分の会社の技術と経営レベルは高く、同時に若い世代の育成もしっかり行なっている健全な会社です」ということを暗に伝えている。

ドイツ政府はマイスター復権で手工業職人の増加を目指す

ドイツの手工業職は130以上あり、そのうち、会社を設立する際にマイスター称号を所有していることが法律で義務付けられている職業が41職種ある。消費者保護と安全の観点からそうされている。木大工職やパン職人などがそれに属する。2003年以前は94職種あったが、EUが目指す自由競争と価格安の政策により、当時のドイツ政府は、53職種をマイスター義務から外した。それによって建設業では、規制緩和されたタイル貼り職や内装職で、マイスター称号なしで独立する事業者が増加した。一方で、それらの職種で「仕事の品質が低下した」「見習生を受け入れられる会社が少なくなった」という意見を手工業業界からよく聞く。

ここ10年あまりで手工業職の人手不足が続いている。ドイツ政府は昨年から、一度マイスター義務を緩和した職種のいくつかを、もう一度義務化し、手工業職の知名度と品質を向上させ、見習生を増加させることを目指す政策提言している。「再び規制をかけることは経済に逆効果」という経済界の声もあるが、高い品質と人材養成を重視するドイツ手工業連盟(ZDH)は、これを歓迎している。