8月初めに、家族でクロアチアで休暇を過ごしました。夏に海に行くのは、北の北海へも、南の地中海へも600km離れている場所に住んでいる私たちにとって、恒例の行事になっています。海水浴が主な目的なので、スプリットの近くの海辺で大半を過ごしましたが、1日だけ、同じ時期に生まれ故郷で休暇を取っていた友人家族に誘われて、彼の実家の近く、ちょっと内陸のイモツキ市を訪問しました。人口1万人ほどの街です。市街地に隣接する有名なブルー湖で泳いで、夕方4時頃に街を案内してもらいましたが、人がほとんど歩いていません。でも、日本の地方都市によくあるシャッター通りではありません。寂れた様子は全くありません。カフェやレストランの机やイスが通りや広場に敷き詰められています。この時間帯はみんな家で昼寝していて、数時間後に涼しくなってから街に出てくるそうです。土曜日の午後、嵐の前の静けさを見たのでした。夜8時くらいから人で溢れかえって夜中2時くらいまで大変な賑わいになるそうです。我々は彼の実家の近くの静かな村のレストランで夕食をとって、賑わいは体験しませんでした。夕食後に、街にアイスを食べに行けないか、尋ねてみたが、「もう車が停められる場所がない。相当歩く必要がある。大変な騒ぎだから今日はよそう」と断られました。
1万人の小さな街に約70件のカフェやレストランがあるそうです。私たち家族とその友人家族が現在住んでいるドイツのヴァルトキルヒ市も、中心部は人口1万人くらいで、お祭り好きで、飲食店は多いほうですが、イモツキと比べたら全然劣ります。集客規模は周辺の村村で7万人くらいだそうです。ほとんど地元の住民たちで街が賑わい、経済が回っています。近年は、観光も、内陸の穴場として、通の間で人気が高まっているようです。でも観光メインではありません。あくまでも主役は地域住民。レストランやカフェも、舌の肥えた金銭感覚がシビアな地域住民は騙せないし、海沿いの観光地よりも質がよく、値段も3割から5割安いのです。人が楽しく快適に集まれる場所があるところでは、コミュニティが活性化します。そこは直接デモクラシー、住民自治の場にもなります。
資本主導ではなく、ヒューマニティ主導の市場経済のコンセプトである「公共善エコノミー」を最近、私は翻訳しました。12月に日本の本屋に並べれる予定です。いわて中小企業家同友会の菊田哲さん、宮崎の同友会にもサポートいただき、2年がかりでここまで辿り着きました。菊田さんに、クラウドファンディングを開設してもらい、支援を募っています。
次にクロアチアに行くときには、海辺の観光地でなく、住民が主役のこの街に宿をとってみようと思いました。住民の幸せと生活のクオリティ、すなわち「公共善」につながる地域経済が機能するこの小さな街に。海までも30分と、そう遠くないですし。