書評 「多様性」  by 赤阪健太郎さん

赤阪さんは、構造デザイナーです。木造の大型建築の構造設計の経験が豊富な方です。高尚な文芸誌や格式ある新聞の書評のような、私の本のエッセンスを抽出した簡潔で知的な文章です。

森林業を森になぞらえて

著者のこれまでの体験や経験(実際に森林で過ごしたであろう膨大な時間と培われた感性、さらに読書経験までを含む)を通過して、森林業とその広がりをまるで森林浴をするように体感し共感できる良書であると思う。また、哲学や脳科学的知見への言及など、一見するとそれぞれの分野の専門家からすれば突っ込まれる可能性があり多くの他の類書が避けるであろう分野にも果敢に言及する立場は、行きすぎた専門分科を超え、議論や熟考のためのたたき台を提示してプラットフォームを与えようという意識の高さを表し、サイードが知識人のあるべき姿として語ったような善いアマチュア性をも感じさせる。もちろんいうまでもなく著者の専門性に敬意を表しつつ、そこに縛られない幅広さは実際に私に更なる読書体験の広がりや新しい資料との出会い、そしてなによりも人との新たな交流を生み出し始めてくれている。つまりこれは凝り固まった専門性にはない真の専門家による在野の対話の資料なのだ。
従って、恐らく著者の巻き込む力こそが本書の重要な力と役割であり、その広がりは同時にこの本を手にした全ての人に開かれたものだろう。
森林業とその知恵への招待状が多くの人に届くことを一読者として心より願いたい。

赤阪健太郎

投稿者: Noriaki Ikeda

日独森林環境コンサルタント 南西ドイツを拠点に、地域創生に関わる様々なテーマで、日独の「架け橋」として仕事をしています。 ・ドイツ視察セミナー ・日独プロジェクトサポート ・日独異文化マネージメントトレーニング

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