注目

「多様性」〜人と森のサステイナブルな関係 (書籍)

《多様性》をキーワードに、「森づくり」から「地域木材クラスター」「モノづくりと人づくり」「森のレジャー」「森の幼稚園」さらには最新の脳神経生物学に基づいた「文明論」まで、私が過去20年の間で経験したことを軸に、多面的にわかりやすく論じています。
客観的かつ主観的に書きました。
科学的なデータや知見を踏まえた専門書ですが、同時に、《多様性》に魅了されてきた私の経験や思いがベースにあるエッセイでもあります。
思いもよらず、「さなぎ」のような静かな生活を強いられた、この1年。過去を振り返り、今後の自分の生き方を考える時間とモチベーションを得ることができました。
まず、自分のために書きました。次に、子供たちの未来のために。
「森の国」ドイツから「森林大国」日本の未来へ贈る、多様性のメロディです。
専門家や業界人に限らず、広く一般の方に読んでもらいたいと思っています。
森の仲間が増えることを願って。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

目次

はじめに ~「多様性」に導かれて

第1章 気くばり森林業

「林」と「森」
明治のパイオニアたちがドイツから持ち帰ったもの
私が「森林学」から学んだ大切なこと
次世代への想いやりから生まれた概念「サスティナビリティ」
世代間の契約
時代の異端児 ガイヤーとメラー
将来の木
人と森をつなぐ道

第2章 日本でこそ森林業を!

ヨーロッパの人たちが羨む「豊かさ」と「多様さ」
日本が持っている宝物の「量」と「質」
日本の森に「新・幹線」
将来木施業と狩猟で「林」を「森」に!

第3章 地域に富をもたらす多様な木材産業

多様な原木は、多様な製材工場を求む
「連なる滝(カスケード)」と「葡萄の房(クラスター)」
優秀な職人を育てる仕組み ~マイスターは現場の先生
木という素晴らしい素材が使える喜び
木で音をつくり、世界へ出かける職人

第4章 生活とレジャーの場としての森林

いつでも気軽に「Shinrin-Yoku」を!
「生きた里山」が観光資源
森の幼稚園

第5章 多様性のシンフォニー

樹木たちの声を聞く
脳のコーヒレント
「結びつき」と「探索」
心の羅針盤
尊厳

あとがき・謝辞

参考文献

アナログ版(印刷本)の販売サイト
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

電子書籍の販売サイト
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B08ZCSLL1C


レビュー】複数の方から、うれしいお便りをいただいております。

まず、校正という大切な作業をやっていただいた吉田聖子さんからの感想です。

シュヴァルツヴァルトの本来の意味やドイツの林道のこと、樹木のネットワークの話など、知らなかったことがたくさん書かれていた。

 ドイツと日本とは、森に関する考え方などがずいぶん違うと感じた。

池田さんのお陰で、ドイツ人が森とどのように付き合っているのか、知ることができた。

日本の場合、縄文時代から森とは深い付き合いがあったはずだが、時代によって失われてしまったことも多くあるのだろうと思った。

 アラビア人は砂漠の民なので、砂漠の風に当たることが体に良いと思っていると、本で読んだが、ドイツ人は森の民として、森で過ごすことを体に良いと思っているところが似ているように思った。

ドイツにおける林業の話は、日本の林業の参考になるだろうと思った。

池田さんのご著書は、林業関係者にこそ読んでもらいたいと思った。

池田さんのご著書を読んで、木工品会社を取材したときに聞いた、伐り尽くして手に入らなくなった木材の話を思い出し、改めて「そういうことか」と納得した。

最終章が文明論だったことに感心した。また、池田さんの文明論は、未来に希望が持てると感じた。

多様性という心地よさ   

冨田直子さん  2021年4月12日 アマゾンより

満たされた読後感に浸っています。森の家でしばらく過ごしてきたような、森林浴をしてきたような、そんな気持ちです。
多様性が認められた世界というのは、自分自身もありのままでいることを許された世界であり、その心地よさが、この本にはあるのだと感じます。

そしてもう一つ心地いいのが、著者の文章が奏でる旋律です。音楽好きだという著者により、音楽になぞらえた表現が随所に出てきますが、それだけでなく、著者のルーツや、著者が森や人々と向き合う中で、森の時間に寄り添えるようになっていく一連のストーリーが、登場する人物や植物、生き物たちと共に、美しいハーモニーとなって響いてくるのです。

今後、森について知りたいという人がいれば、私はまずこの本を薦めるでしょう。
誰もが親しめる平易な文で、森という多機能な存在が、全方位から紹介されています。ドイツで行われてきた近自然的森林業の話から、ドイツの森林官が羨むほどに豊かな土壌、木の成長量、生物多様性を持つ日本の森の可能性、そしてドイツに習い日本でも行われている道づくりからはじめる森づくりの取り組み、さらに地域に富をもたらす多様な木材産業の話から、生活とレジャーの場としての森林までと、あらゆることに触れられています。そして、先人たちの試行錯誤により、豊かで持続可能な森と社会の在り方がドイツにはすでにあるという事実は、私たち日本人に勇気と希望をくれます。技術的な内容もわかりやすくリズミカルに書かれており、日本の森の可能性にどんどんと心が躍っていくのです。

また、SDGsの本質を学べる本としても、大いにおすすめしたい一冊です。森は、SDGsのすべてのゴールに通じる入口の一つです。本書では、環境視点だけではなく、人々が森林産業を通じてどのように豊かに暮らせるか、そして、森の幼稚園といった教育や福祉、心身を癒す「Shinrin-yoku」の広がりにまで話が及びます。
さらになんといっても、300年前、ドイツの森でカルロヴィッツによって生み出された「サステナビリティ」という言葉に関する丁寧な考察が、この本にはあります。人類がサステナビリティの大切さに気付いていく過程と、多様性の意義に気づいていく過程とは、まるで右足と左足の関係にあるようです。一歩ずつ歩みを続け、叡智を積み重ねてきた結果今日があるのだということが、ドイツの先人たちが辿った森との向き合いを通じて描かれています。SDGs に関わるものとして、この原点に触れられる学びは大変貴重です。
また第5章「多様性のシンフォニー」で、脳神経生物学者ゲラルト・ヒューターの著作にあると紹介されている「脳の省エネ」の話は、多くの示唆に富んでいます。人類は、最大のエネルギーを消費する脳の「省エネ化」のために、この複雑で多様な世界をあえてシンプルに捉え、生き抜いてきたというのです。よって、二項対立化、整然と整理する、単作・一律で何かを育てる、といったことは人類の生存戦略の一つであるとのこと。大変興味深く、それゆえの進化もありましたが、何事も過ぎたればです。著者の書く通り、今の持続可能なソリューションの実践者の共通項は、多様で複雑な世界を「理解し、受け入れ、多様性を活用している」という下りには共感を持って読みました。多様であることを、むしろシンプルに楽しんでしまいたい、そんな思いが、読み進める中で湧いてきます。

SDGsのいう「誰一人取り残さない」世界に向き合うには、自然界(人間界も含む)における「多様性」への理解が欠かせないと感じてきましたが、本書はそれをもう一段深いレベルで問い直す機会を私にくれました。

誰もが、すべてのいのちの尊厳と向き合い、森と同様に、次世代を想う数百年という時間軸と共に、自分らしく、心地よく、豊かに暮らせる世界――。これからの自分の在り方、世界の在り方を考えていくためにも、何度も読み返したい本に出会えました。そして、森づくりへの思いを、また一層強く持ちました。

是非、多くの方に読んでいただきたい本です。
森に散歩にいくように、またページを開きたいと思います。

「森林」を入口に「多様性、持続可能性」の本質を解きほぐしてくれる

佐々木正顕さん 2021年3月31日  アマゾンより

著者の池田氏は、ドイツ在住25年の経験豊富な森林産業コンサルタント。
ただし、本書は海外の先進的な制度やシステムだけを上から目線で伝えようとするものでななく、アプローチはむしろ真逆だ。
森林に関わる人たちの感情や想いから望ましい森林のあり方を解きほぐしてくれるが、池田氏の筆はそれだけでは止まらない。
特に、ドイツの著名な脳神経生物学者による、脳の省エネ機能を起点とした人間の思考パターンが、物事を単純化して分類させてきたという「発見」の紹介は、本書を貫く太い軸となって大変興味深い。
これをベースに、幸福感や金融資本主義、コロナ後の社会像まで「多様性」が本来意図する社会や自然のあり様を多彩に示唆してくれる。
「本当の持続可能な社会」を模索する、林業関係者以外の方にもぜひお勧めしたい、電子書籍の良さを活かした一冊だ。

多様性は本当に大切である事を学びました。

長瀬雅彦さん  2021年4月14日  アマゾンより

実に内容の意味ある内容、私自身ずっと探し求めてきた本に出会えました。
多様性まさに今一番重要なテーマ SDGsそのものですね。素敵な職人的な家庭に生まれ、新しい生き方、楽しみ方を求め留学し、また違った多様性を学び、日本の文化と西洋の文化を考えた思考で進化したのだと思います。そこでドイツを選択したのが池田様の宝になったのだと思います。留学中の幅広い研究と専門分野を学ばれ、広い寛容、配慮、リスペクト、探究心、想像力を培ったのだと思います。 近自然的森林業と多機能林業という哲学、ビジョンはまさに私も森林管理のあり方を学ぶべきものと感じています。『すべての理論はグレー 森と経験だけがグリーン』素晴らしい言葉です。サスティナビリティとカロヴィッツの事も初めて内容を知ることが出来ました。当然300年ほど前に生まれた言葉とは知っていましたが。 また長い将来の話を森林業のロマン フレッヒさんを思い出します。
サスティナビリティ(持続可能性)は「次世代への思いやり」に支えられている。次世代という「相手」に対する意識的な配慮の感情であるから「想いやり」である。この「想い」は人間の長い歴史のなかで、守られ-汚され、強調され-軽視され、実行され休止されることを何度も繰り返してきた。現在の私たちは、より一層この「想い」の所在に敏感になり、守り、強調し、実行していかなければならないと私も感じました。
多機能森林業を行うためには、経済、保養、自然保護と、多面的な「気くばり」をされた道が必要である。道も多様な機能を持っていなければならない「多機能森林基幹道」である。
しかし日本の林業関係者たちの認識は、これとは対照的に、ネガティブであり、できない理由を並べるときりがない。
森林所有者が、絶えず100年先、数世代先を考えた森林を利用することは、地域の森林・木材クラスターの在続と進化にとって欠かせない大前提である。「森のロマン」あっての地域の問題となります。今後の森林業は多面的な注意力を要するワイルドな環境で、ほかの仲間の個性や能力に配慮し、助け合いながら、五感をフルに使い、好奇心と自分の意志に基づいて、自発的に仲間と連帯して遊ぶことによって培われた能力であり、森が与えてくれた、心と体のバランスだ。まったくその通りだと思います。
森林業、林業、木材産業 様々な言葉が先行される中 本質知る為にも重要な参考書となるでしょう。

2度読みして深く理解したくなる本

落合俊也さん  2021年4月26日 アマゾンより

池田さんの講演はだいぶ前に聞いたことがあったし、「多様性」というタイトルは森を語るキーワードとしては特に新鮮味を感じなかった。しかし、読み進めてみると私の想像をはるかに超える深い実際的経験と知識を持って人と森の関係を掘り下げ、巧みに様々な理論で補強しているので、わかりやすく説得力があった。特に最終章は素晴らしく、2度読みしてしまったほどだ。

読み始めは林業先進国ドイツの森林産業システムと社会システムの調和的構造を自ら体験した筆者が、実に誠実にそれを紹介することから始まる。私たち日本人は、ドイツの素晴らしく整備された森林システムにはため息が出る一方で、日本の林業はだめだと考えがちである。ところが、日本の林業にも十分な潜在能力があることが示され、未来の発展に至る具体的な道筋も提案されている。

林業先進国のドイツを手本にして語られているのは、作者の経験と研究がドイツで行われたからだが、本書に続編があるとしたら、ほかの国の事例やドイツの失敗例にも幅広く目を向けて池田さん流の解説を聞いてみたいと思った。

初めに紹介したように、最後の章は珠玉の内容だと思う。池田さんはこのこと言いたくてこの本を書いたのだろうと私には思われた。ヒトの脳の構造から森と私たちの社会構造を読み解き、古くて新しい人間哲学の世界をも俯瞰した内容は新鮮だった。

多様化を理解しそれを長期的に利用した続けているソルーションこそが正しい回答であるはずなのに、近代に成立した短絡的なソルーションが大きなお金を生みだし現代産業の中枢をなしている。しかし、このような多くの金を生み出す大量生産単一化合理主義という現代の社会特性は、人類を破滅に導く可能性が高い。

終盤で作者の興味は人間の脳の構造や働きに注がれているが、脳の構造や志向を理解することで現代社会の問題点や自然との共生法のリアルな解決策を模索することができるのだろう。森を語る内容から脳を語る内容にシフトしすぎた感はあるが、優れた思想家や芸術家の思想や言葉を織り交ぜながら自分自身の発想の原点を暴露しているようで、その率直さにも好感を持った。

「多様性-人と森のサスティナブルな関係」を読んで

平田孝則さん  2021年4月28日 アマゾンより

一読した大雑把な感想ですが、森林関連の内容が多いにもかかわらず、日頃森林・林業・林産業をあまり理解していないごく普通の人達にとっても分かり易い優れた文体であることに驚きました。併せて、日本とドイツの林学史、育林・収穫作業、森林道、パイプオルガン製作、森の幼稚園、森林の効用、人文科学方面からのアプローチなど多岐にわたって読者の関心を引く構成であることにも感嘆した次第です。著者のヘルマン ヘッセ敬愛や人生観、社会観などにも共感を覚えました。巻末にある国内外の多数の参考文献一覧を見ても、著者の博学・博識ぶりを伺うことが出来ました。同時に、ここに至るまでの著者の道のりは通り一遍の努力では決して踏破できなかったであろう事、心身共に苦労をいとわない不断の勤勉の賜であることを理解できました。私の親しい友人・知人にも本書を紹介したところです。

【KANSO建築 構造見学会】

 参加費無料11月21日(土)午後、秋田県仙北郡にて「KANSO」建築の見学会を開催します。「KANSO」は、スイスの建築家 サシャ・シェアと、日本の建築家 佐藤欣裕(もるくす建築社)と ドイツ在住の池田憲昭(私)がチームを組んで昨年から準備してきたものです。

日本でのKANSO実験棟が現在、もるくす建築社の新オフィス「美郷アトリエ」として建設されています。21日は、立ち上げが終了し、断熱施工中の予定です。

KANSOは、名前のとおり、自然素材を使い、シンプルな構造、機械設備をできるだけ使わなくて済むシンプルなソリューションです。暖房も冷房も機械換気も、おそらくレンジフードも使う必要がない、年中快適な室内環境を保てる建物を設計、建設しています。その秘訣は、質量のある自然素材の躯体をベースに、蓄熱(調熱)、調湿、消臭、除菌、という自然素材が持つ多面的な機能を効果的に活用することです。

案内はこちら
https://www.kanso-bau.com/fileadmin/Medien/Download/20201121_KANSO_Event.pdf

スイスの建築家のシェアとドイツの池田は、当日ZOOMにて現場と繋がります。

誰も欲しがらない「人」と「建物」に新しい生命を!

文化財のため改修費用が嵩むので誰も手をつけようとしない廃屋。誰も好んで雇ったり住まわせたりしたくない社会の片隅に追いやられた前科者や浮浪者たち。誰も欲しがらない「建物」に新しい生命と機能を、誰も欲しがらない「人」に職を、住まいを、将来の展望を、人間としての尊厳を与えてきたシュヴァルツヴァルトの小さな建設会社Domizil(ドミツィール)。ドミツィール社は、30年以上、シュヴァルツヴァルト地域で古建築の改修を手がけるヴィリー・スッター氏によって90年代末に設立されました。

スッター氏は、1980年代初頭にギムナージウム(高校)を出たあと、工務店や住宅設備工事の会社で数年経験を積み独立しました。80年代当時、彼の生まれ故郷のシュヴァルツヴァルトのティティゼー・ノイシュタット市では、住宅ブームで、たくさんの古い建物が壊されて、新築の家が建てられていました。彼にとっては、趣と雰囲気がある古い建物が解体されていくのは、自分が慣れ親しんだ故郷がどんどん奪われるような気持ちでした。それに少しでも歯止めをかけようと、農家の古い納屋や空き家になっている古建築を見つけては、所有者と交渉し、買取り、改修する事業を始めました。出来上がったものは、転売するか、もしくは自社で所有して住宅やオフィスとして賃貸しました。誰も手をつけようとしない廃屋の建物を、文化財に指定され改修の条件も厳しい物件を、丁寧にしかも経済的に改修し、アップビルディングしました。並行して、買取・改修資金の調達と改修した建物の管理運営をする「組合」も設立し、事業の枠組みを強化しました。

1990年代の末、スッター氏は、ある社会福祉住宅の改修事業の際、長期失業者や前科がある人たちに出会い、彼らの人生や抱えている問題に心を打たれ、社会福祉専門家と一緒に、彼らの社会復帰をサポートするための施工会社を別途設立しました。誰も好んで受け入れようとしない人たちを、建設業の労働者として雇い、職業養成しました。そして改修した建物のいくつかは、組合で所有し、過去の履歴上、住まいを見つけるのも困難な社員や類似の状況にある社会的弱者に安く賃貸しています。

私の友人でフライブルク在住の映画監督ペーター・オーレンドルフは、社会から見放された「廃屋」と「社会的離脱者」を結びつけ再生させてきた気鋭の会社ドミツィールを16年間かけて丁寧にドキュメントし、2018年に映画「誰も欲しがらない」が完成しました。脚色のない深く静かに心に訴える秀作映画です。オーレンドルフ監督は、商業主義的なメデイア業界が作れない映画を独自予算で製作し、ノートパソコンとプロジェクターとDVDをもって、各地で上映会を行い、その場で観客と生で交流する活動を10年以上続けています。

このドイツの映画、現在日本語訳と字幕編集作業をしています。日本版が出来上がったら、オーレンドルフ監督と一緒に、「オンライン」で上映会と交流会を開催します。

映画「Die Keiner will 誰も欲しがらない」のトレイラー

日本の森林は繊細な「緑のインフラ」

世界中で長雨や集中豪雨による水害が増えています。私が住む中央ヨーロッパの山岳地域は雨量も平地より多く、水害のリスクが高い地域で、また山岳の森は、下流域の洪水を防ぐ、もしくは抑制するための重要な機能があります。健全な森林を維持発展させることが、人工構造物による技術的な対策と同様に重要であることは、80年代より独/墺/スイスのアルプス地域を中心に行われている複数の研究データが明示しています。

とりわけ「豊かな土壌」が洪水抑制のカギだとされています。例えば、多様で元気な混交森のミミズがたくさん生息するふかふかの土壌は、1時間50mmの集中豪雨も問題なく受け止めることができます。

日本は世界が羨む森林大国で、太陽にも水にも土壌にも恵まれた、森林にとって絶好の環境があります。日本の森林は、高い保水・貯水能力を発揮できるポテンシャルがあります。「緑のインフラ」です。技術的インフラであるダムや堤防と少なくとも同等に捉えるべきものです。技術的インフラとの大きな違いは、絶えず遷移していく生命複合体であることです。

急峻で崩れやすい地形と地質が多い日本の森林は、繊細な感覚で扱わなければなりませが、うまく自然の発展を後押しすることができれば、緑のインフラとしての機能を向上させ、恒久的に維持することができます。人工物のような劣化や寿命はなく、大きな補修や改修やリニューアル費用がかかりません。

Sustainable Diversity 持続可能な多様性

「木材」は分散して存在し、多様な遺伝子や土地の環境、生物間の相互作用が作り出す、一つとして同じものがない「多様」な素材。「大きいほど効率がいい」というメルヘン、同じものを大量に生産することで経済効率性を求める手法が、木材という分散して存在する多様な資源の有効な活用には適さないこと、限界があることに多くの人々が気づいています。地域の経済を支える森林木材クラスター。リーマンショックや今回のコロナショックで、危機に対する柔軟さ、強さを示しているのは「小規模」で「多様性」のあるプレイヤーです。小規模で多様なものが、森の生命複合体のように有機的に繋がって成り立っている構造です。大きなリーダーや大きな資本や会社に頼る、という一種「楽」で「快適」な「硬直」したソリューションではなく、多様性ある小さなプレイヤーが有機的に相互作用して「流動的」にクラスターを形成・編成していくことが、地域の持続可能な発展に繋がると思います。

社会の歯車から創造的主体に!

「春からオンライン授業でしたが、子供たちも先生たちも新しい状況によく対応してうまくやりました。自分は先生として子供たちの成果に大変満足しています。嬉しいことに対面授業が今学期始まりましたが、全学期の補習を提供する必要性はまったく感じていません。何人かの子供たちは、このコロナ期間に、かえってしっかり自分で勉強するようになり成長しました」昨日、日本で言うと高校生にあたる子供の学校の学期のはじめの定期的な父母説明会での担任の先生の言葉です。

「大変な思いや苦労している人たちもいるので、大きな声では言えないけど、自分にとってロックダウンとその後の今は、突然もらった素晴らしい贈り物だよ。仕事の後も夜イベントなど毎日のように予定がびっしり入っていたけど、突然全部なくなった。家に帰ってゆっくり料理したり、ソファーに座ってテレビを見たり本を読んだり、妻と話したり、自転車に乗ったりする時間ができた。大きな声では言えないけど、今、心も体もとてもいい気持(状態)だよ」手工業の会社のオーナーで、町の文化活動にも熱心な私の友人の言葉です。

ロックダウン中、世界中で早産、とりわけ超早期の早産(27週以前)が大幅に減少しています。

https://www.nytimes.com/…/coronavirus-premature-birth.html

デンマークでは、超早期早産が90%減少した、というスタディが発表されています。

https://www.medrxiv.org/con…/10.1101/2020.05.22.20109793v1

理由は解明されていませんが、ストレスが少なくなった、夫やパートナーが一緒にいる時間が長くなったからでしょうか?森で散歩やスポーツするのが好きなドイツの人々。コロナ危機により、はっきりと実感できるくらい森林訪問者数が増えています。以前は日常のストレスを発散するために森に出かけていたような人たちが、今はリラックスした状態で自然を時間を満喫してるような印象を受けます。ここに書いたこととは反対の経験をしている人たち、苦しんでいる人たちもたくさんいます。しかし、かなりの人たちが、当初の恐怖や不安による硬直状態を脱して、危機に柔軟にクリエイティブに対応し、変容し始めています。医学的には、アドレナリンがドーパミンに置き換わるプロセスです。

多くの人たちが、コロナ以前の「加速」したストレス生活から「減速」を余儀なくされ、そのなかで、自分を社会を見つめ直しています。子供として、親として、会社員として、先生として、消費者として、「社会の歯車」「対象」として生きていた現代人の多くが、創造的な「主体」に変容し、社会も変えていくプロセスが始まっている気がします。

コロナがポピュリズムの減少を促進

ドイツのベルテルズマン基金による最新の興味深い社会学調査です。

https://www.bertelsmann-stiftung.de/fileadmin/files/BSt/Publikationen/GrauePublikationen/ZD_Einwurf_2_2020_Populismusbarometer.pdf

2017年、世界的な傾向と同調し、ドイツでも有権者の約3割がポピュリズム的スタンスでしたが、2019年以来、減少傾向があり、今年のコロナ危機がその減少傾向を後押ししている結果がでています。


ポピュリズムのピークだった2018年末と2020年6月の間の値を比較すると、「ポピュリズムの有権者」の比率は32.8%から20.9%と約12%の減少、「ポピュリリズムでない有権者」は、31.4%から47.1%と、約16%の上昇、「どちらにも該当する有権者」は、35.8%から32%と、約4%減少しています。

政党別で見ても、右よりも左よりもほぼどの政党においても、ポピュリズム有権者の割合は2018年との比較で、大きく減少しています。唯一「緑の党」だけが、もともとポピュリズム有権者の割合が少なく、減少幅も僅か。

この調査は、学術的にポピュリズムの定義をし、それに基づいてアンケート項目を作成し行われています。多様性のデモクラシーの発展を望む私としては嬉しい傾向です。コロナで進行している多くの人々の内面の質的変容は、持続可能な社会に待ち望まれるパラダイムの変換を牽引する力になると希望を持っています。

9月末〜10月末のオンラインセミナー

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ】
村上敦
2020年9月24日(木) 20-21:30 
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ】
滝川薫
2020年9月29日(火) 20-21:30
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

MITエナジービジョン ウェビナー - 持続可能な社会の実現へ
【Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?】
池田憲昭
2020年10月1日(木) 20-21:30
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

集約版 ①森林業+②新森道+⑥森林浴+⑦共生】
2020年 10月5日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldmix1005.peatix.com
2020年 10月17日(土) 16:00-18:00
https://sustainable-waldmix1017.peatix.com

【集約版 ③森林作業+④木材クラスター+⑤自然素材の建築】
2020年 10月13日(火) 20:00-22:00
https://sustainable-holzmix1013.peatix.com
2020年 10月25日(日) 17:00-19:00
https://sustainable-holzmix.peatix.com

【球磨川地域支援の特別企画 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】2020年 10月15日(木) 18:00-20:30
https://sustainable-kumagawa.peatix.com


【森の幼稚園からBeyond コロナ】
2020年 10月19日(月) 20:00-22:00
https://sustainable-waldkinder-corona.peatix.com

オンラインセミナー「サステイナブルは気くばり」2020年9月ラインナップ

グリーンインフラ、Beyond コロナ、ユネスコ文化遺産とSDGs、農業、手工業、エネルギー、エコタウン、ビオホテルと新しいテーマも加え、9月のオンラインセミナーをラインナップしました。

ドイツ/スイスで同様の活動をする同僚の村上敦(9月24日「エコタウン」)と滝川薫(9月29日「ビオホテル」)との共同企画もあります。

興味がある方、プロ、アマ関係なく、お気軽にご参加ください。

2020年 9月5日(土)20:00-22:00
サステイナブルは気くばり - 森から建物まで
集約版 ⑩+⑪ 国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」
https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

2020年 9月11日(金) 20:00-21:30
With コロナの世界からBeyond コロナの世界を眺望する
https://sustainable-withcorona-beyondcorona.peatix.com

2020年 9月15日(火) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.1「三段酪農によるチーズ作り」
https://sustainable-unesco-dreistufenlandwirtschaft.peatix.…

2020年 9月16日(水) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.2「オルガン製作」
https://sustainable-unesco-orgelbau.peatix.com

2020年 9月17日(木) 20:00-21:30
ユネスコ無形文化遺産とSDGs Vol.3「共同組合」
https://sustainable-unesco-genossenschaft.peatix.com

2020年9月24日(木)20:00-21:30  村上敦
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.1 ドイツのエコタウンと気候中立のために必要なインフラ
https://mit-energy-vision-ecotown.peatix.com

2020年9月29日(火)20:00-21:30  滝川薫
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.2ビオホテルから考える持続可能な観光業 – 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ
https://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

2020年10月1日(木)20:00-21:30  池田憲昭
MITエナジービジョン - 持続可能な社会の実現へ
Vol.3 木質バイオマスエネルギーは持続可能なソリューションになるか?
https://mit-energy-vision-holzenergie.peatix.com

雑草を活かしたワイン畑の土づくり

私の知り合いのエコワイン農家のシャッフナー氏。

バーデン地方のカイザーシュトュール地域で地域のパイオニアとして長年質の高いエコワインをつくっています。

彼は土壌を一番大切にしています。

そのために、ブドウの木の周りに意図的に多様な草類を育成しています。「従来型」の普通のワイン農家は、雑草をブドウの敵として、耕して根こそぎ取り除くか、もしくは化学物質のカクテルで死なせます。彼は、空気中の窒素を固定し、益虫となる昆虫や鳥を呼び寄せる多様な草類のタネを撒いて育てています。

普通の農家が「雑草」と言っている植物は、土に根を張り、土中の酸素量を増やし、保水能力を増加させ、土中の微生物の活動を活性化させ、ブドウの健全な成長に寄与します。

ただし、春から初夏にかけての植物の成長期は、ブドウの木と雑草は、土中の限られた水分と養分を求めて競合してしまうので、通常「草刈り」をしてブドウにできるだけ養分が行くようにします。

シャッフナー氏も以前はその時期草を刈ってマルチング(刈った草を地面に敷く)していましたが、数年前から刈らないでイボのあるローラーで踏み抑える方法に変えました。刈ってマルチすると草に産み付けられた益虫の卵が死んでしまうからで、踏み抑えるやり方であれば卵が死なずに済むからです。

リンクしているユーチューブのビデオでその実践を写し本人が解説しています。ドイツ語ですが日本語翻訳機能を使って見てください。

ここ数年、気候変動の影響で、ブドウの成長期に雨が極端に少ない干ばつが通常化しています。「普通」の農家のブドウが水不足のストレスでダメージを受けているなか、彼のような土壌を大切にするエコ農家のブドウは強靭でダメージをあまり受けない、ということが各地で観察されています。自然を活用した保水・保ミネラル力の高い土壌づくりの効果です。

また、豊かな土壌は、保水・保ミネラル力だけでなく、CO2の固定能力も高く、豊かな土(腐葉土)を維持しつくる農業や森林業の施業は、災害防止抑制、気候変動抑制の効果があります。

下記のオンラインセミナーでは、国土を守り、人間に多大な恩恵をもたらす土壌、その維持創出のために必要な森林や農地での施業の話をします。お気軽にご参加ください。

【集約版:国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】
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