インクルージョン (DOYU IWATE 11月号より)

先週、岩手中小企業家視察団の第5回目の欧州視察セミナーでした。エネルギーヴェンデをテーマに始まったセミナーでしたが、「持続可能性」を基軸に、農業や森林業、木材産業など、回を追うごとにテーマは広がり、今回は、要望に応え「インクルージョン」の視察も加えて実施しました。

ここ10年あまり、「インクルージョン(=包括、一体性)」という言葉が、ドイツの社会で定着してきました。異なる人々が同等の権利を持って社会活動に参加することです。知的レベルや身体能力、出身地や育った環境、性別などの違いを、みんなが当然のこととして認め、差別や線引きをせずに、協働し、共生することです。類似の言葉に「インテグレーション(= 統合)」があります。こちらは、違いがある人々を社会のなかに「取り込み」ますが、「異なる」人々は、「囲い」のなかに集められ、「普通」の人々と「並行」して共存します。障害者や移民・難民に、特別な施設や住居を提供する従来の福祉政策がそうです。一方で「インクルージョン」においては、「普通」の人々と「異なる」人々が、同等の権利をもって混ざり合い、「一緒」に生活、活動をします。

私の息子は、2013年、小学校入学に際し、インクルージョンクラスに入りました。クラス23人のうち「ハンディキャップ」を持った子供が5人、先生が2人という構成でした。ドイツの小学校は4年間ですが、息子は、多様性のあるクラスのなかで、社会的能力、自己管理能力、判断力、配慮の心などが、より身についたと実感しています。「普通」の子供である息子は、ハンディキャップのある子供を助ける、サポートする役目でしたが、「与える」ことで、多くのものを「受け取り」ました。

今回の同友会の視察でも、インクルージョン企業から、同じような見解や経験談を聞きました。「ハンディキャップのある従業員が入ったことで、会社の雰囲気が変わった。従業員同士のコミュニケーションがポジティブに、親密に変わった」「仕事を丁寧にゆっくりやるようになった」「普通の人と障害者、一緒に仕事をしていると、いったいどちらが障害者なのか、わからなくなるときがある。障害者からたくさん与えてもらった」など。

違いやハンディキャップを「個性」と認識し、それぞれの個性を生かして、仕事の構成と配分をする。仕事内容に人を適合させるのではなく、人の個性に合わせて仕事を再構築し、みんなで一緒に発展させていく。持続可能な企業のコンセプトを学びました。

岩手中小企業家同友会の会報「DOYU IWATE」2018年11月号のコラムより

 

ドイツ視察セミナー SLOW 食と文化と街づくり 2019  4. 24 – 28

ドイツ 経営者セミナー オープンマインド

ドイツ視察 地域創生 LEADER

将来を担う世代 (DOYU IWATE 2018年9月号)

8月初めに、愛媛県の上浮穴高校の高校生10名と引率の先生3名が、シュヴァルツヴァルトに森林業と木材に関する研修に来てくれました。私にとっては、久しぶりの10代の若者たちのグループで、しかも私の専門分野がテーマだったので、モチベーションが湧き、若いエネルギーももらうことができた充実した6日間でした。

上浮穴高校は、愛媛県の松山市から南に40kmくらい、四国山脈の麓に位置する林業が盛んな久万高原町(くまこうげんちょう)にあり、希少な「林業科」をもつ高校です。卒業生は、地元で林業事業体に就職、もしくは大学や専門学校に進学しています。

自然が豊かな場所ですくすくと育った素直で陽気で、高い自己管理能力と社会性をもった生徒達でした。引率の先生方も、生徒たちを優しく見守る、背後からサポートする、というスタンスで、私としても気持ちよく視察プログラムを遂行することができました。

シュヴァルツヴァルトの持続可能な森林業の現場で、「林業」と「森林業」の違い、森林の「国土保全機能」や「レクリエーション機能」「木材生産機能」を、統合的に扱う森づくり、そのために必要な「質の高い路網」、単一樹林を混交の複層林に変えていくための「将来木施業」などを、森林の現場実習で、現地森林官がわかりやすく解説しました。危険な仕事である森林作業に必要な「心構え」や「防護装備」についても実際の作業や現物を見せて説明しました。生木を使った木工ワークショップも行いました。フライブルク市の環境共生の街づくりに関する研修も行いました。

内容的に大人向けの視察セミナーと同レベルのものでしたが、若く好奇心がありオープンマインドな愛媛の高校生達は、集中力を絶やすことなく、自発的に質問もし、有意義な研修だったと思います。

生徒達は、これから日本の将来を担う世代。わずか6日間でしたが、彼らがこれから自分のペースで成長し、有意義な人生を構築していくための、持続可能な社会を構築するための、いくつかのアイデアやヒント、勇気を与えることができた視察セミナーであったことを願っています。

幼樹や若木が成長するためには、樹種や個体特性に応じて「スペース(=光)」が必要です。しかし、気温の変化や極端な日射や雨風を緩和する「大人の木(母樹)による保護」も必要です。個体別の適度な成長スペース、適度な保護。人間も同じだと思います。

ドイツ視察セミナー 森林業 Forst live (林業機械展) 2019 3. 28 – 4. 1 

ドイツ視察 森林業 サステイナビリティの原点

ドイツ視察 農林業 BIO  再エネ 地域創生 (学生向け)

ドイツの演繹的モノづくり (DOYU IWATE 2018年8月号)

明確な目標を定め、現在の立ち位置と与えられている枠組みを確認把握し、目標に効率的にたどり着くための道筋(プラン)を作成し、新しいモノをつくる。

これは、ドイツの伝統的なやり方で、強みであり、そこから数々の革新や発明品が生まれています。ドイツの高い技術と強い経済力を支えています。

日本では、細部に渡る知識と技術を習得し、経験を積み上げたうえで、その結果として一つのいいモノを作り上げる、という「経験的手法」の伝統がありますが、ドイツでは、基礎と原理原則の知識をベースに、経験のない分野で新しいモノをつくる「演繹的手法」の訓練を、小学校のころから受けます。

職人教育はその典型です。デュアル(2元)システムと呼ばれ、企業と学校が一緒に職人を養成します。職人の卵(見習い)は、まず自分がつきたい職業分野の親方(マイスター)と2年から3年の徒弟契約を結び、それをもって職業学校に入学を申し込みます。職場のマイスターのもとで実践的な教育を受け(6から7割の時間)、学校では、理論的、基礎的な授業を受けます。基礎や原理原則を実践的に学び、最後の卒業試験では、与えられた枠組み(材料、道具、予算、時間など)の中で、目標を定義(デザイン)し、自分で製作プランを作成し、一つのモノを卒業作品として作ります。例えば大工であれば、建物の躯体のミニチュアを、家具職人であれば、家具のミニチュアを製作します。

先日、BW州、シュツットガルト近郊のルードビックスブルク市にあるオルガン職人の職業学校を訪問しました。ドイツに一つしかない学校で、全国各地の工房でオルガン職人見習いをしている生徒が、年に12週間、2回に分けて集い、基礎と理論を学びに来ます。現在、1学年50名程度の見習生がいます。

オルガンは、その複合性、音色やデザインの多彩さから、「楽器の嬢王」と呼ばれています。教会パイプオルガンは、一つとして同じものがありません。個々の教会の広さ、室内環境、湿度、デザインや音色とその幅に関する依頼者の要望、予算など、与えられた枠組み条件に合わせ、1からデザイン設計し作ります。オルガン職人はオールラウンダーで、音響学、空圧理論、構造力学、デザイン、金属加工、木材加工、調律など、幅広い知識と技術を複合的に組み合わせて設計、製作します。演繹的なドイツのモノづくりの最高峰と言っていいでしょう。

「管楽器製作の技術やノウハウは、他の国が真似して習得することができるけど、パイプオルガン製作は、その複合性と個別設計のためか、なかなか他の国で真似できないみたいです。ドイツのオルガン職人が世界中から注文を受けて仕事をしています」と誇らしげに学校の副校長が話してくれました。

岩手中小企業家同友会 会報「DOYU IWATE」(2018年8月号)掲載

ドイツ視察セミナー モノづくり 木づくり 地域づくり 2019 3. 13 – 17 

ドイツ視察セミナー SLOW 食と文化と街づくり 2019  4. 24 – 28

ドイツ視察 森林業 + 木材

ドイツ視察セミナー Ligna国際木工林業機械展 & 黒い森  2019  5. 29 – 6. 2

ドイツ視察セミナー モノづくり 手工業 職人養成 地域創生