最近、ソニーCSLの船橋雅俊氏が研究実践する「協生農法」のことを知りました。従来の単一栽培による大地の砂漠化と飢餓の問題があるアフリカ数カ所で大きな成果をあげ、世界的に注文されている農法です。私も、ネットで公開されている「協生農法実践マニュアル」をダウンロードし、早速自宅の菜園で実験を始めています(近所のドイツ人のおばさんにまた「あなたのところの庭は熱帯雨林のジャングルみたいね」と皮肉られそうですが)。基本的な考え方と手法は、私が携わる森林業の「恒続森施業」とほぼ同じだったので、すぐに親近感が湧きましたし、理にかなっていること、成功することを、ほぼ確信しています。基本は、自然の複合性を包括的に理解し、自然と「共に」生産活動することです。
1)協生農法では、土を大切にし、絶えず土の上に植生がある状態にします。恒続森でも同様に、絶えず木がある状態で森を維持し、生産基盤である土を守り育てていきます。
2)協生農法では、多種多様な野菜や植物を混生させ生物多様性を創出させ、生態的な安定性を生み出します。恒続森においても、多様な樹種、多様な樹齢、多様な大きさの木々が混生した形を造り維持していきます。
3)混生させることによって、協生農法では、収穫期間を長く引き伸ばすことができて、絶えず何か収穫できるような状況が生まれます。また地下と地上の空間を多様な植生で立体的に埋めて効果的に活用できるので、面積あたりの生産性は、収益/維持コスト比で、伊勢の協生農園のデータで、従来の慣行農法の5倍という数字がでています(ただし著者に確認したところ、人件費はコストに含めていないということなので、科学的に誠実な比較ではありません)。恒続森も同様に、絶えず、どの世代も、大きな木を収穫できる状況にしておきます。また、様々な形状の樹種、大きさの違う樹種が混生し、立体的に地下と地上の空間を効率的に活用できるので、単一樹林よりも平均蓄積(ストック)を上げることができて、コストに対する収益比率も高くなります。
4)両方の手法とも、自然に敬意を払って(人間の科学的な理解がまだ隅々まで及んでいないミクロとマクロレベルの生態系の複合的な繋がりとネットワークにも)、絶えずしっかり観察し、人間は、自然が示す方向を受け入れ、自然に逆らわずに、必要に応じて「ソフトな方向付け」をしていきます。