森づくりは道づくり

森林業にとってももっとも重要な資本は「土」です。ですがもう一つ重要な資本があります。それは性能のいい「道」のインフラです。

「土」も「道」も目立たない存在です。多くの人は、目に映りやすい「樹木」の大きさや、元気さ、種類に注目しがちです。ですが木が育つための欠かせない土台は「土」、森を合自然的に経済的に手入れ間伐するために欠かせない前提はいい「道」です。

土を守り育てるコンセプトや行為、いい「道」をつくるコンセプトや行為は、目立ちませんし、多くの人が知りません。日本が世界に誇る「新幹線」と同じです。新幹線の列車のデザインと性能には大きな注目が行きますが、その性能を最大限発揮でき、過密で精密な運行スケジュールを可能にする「線路インフラ」と「ロジスティック」のコンセプトとその品質は、ほとんど注目されていません。「新幹線」、と列車ではなく「線路インフラ」のネーミングがされているにも関わらず!

新幹線車両並みのスピードと快適さを提供できる列車は他の国にもあります。そのなかで日本の新幹線が世界から高い評価を受けているのは、ネーミングの通り、素晴らしいインフラがあるからです。

10年前から、日独合同で、いくつかの場所で、日本の豪雨にも問題なく耐えられる道が作られています。主流の林業政策とは異なり、日本の森林の道の規格からも外れる「新森道」を、計画作設することを支援していただいた、いまでも支援していただいている方々にこの場を借りて深くお礼を申し上げます。とりわけ初期の段階で「急峻で雨が多い日本では無理」「こういう広い道を作ったら森が壊れる」など、有識者や業界から多数の懸念や非難があるなか、「あなたたちの提案していることは多分正しいと思うから、信じてやってみますよ」と合理的理解と信念と勤勉さをもって鶴居村森林組合と一緒に実行された北海道庁の小笠原さん、それから岐阜県高山で、同様に信念と自然への理解と愛情をベースに、現在まで継続して「新森道」の推進をされている長瀬土建の長瀬さんに、特別な敬意を表します。

北海道鶴居村で2010年にできた日本最初の新森道
岐阜県高山で2012年にできた新森道

投稿者: Noriaki Ikeda

日独森林環境コンサルタント 南西ドイツを拠点に、地域創生に関わる様々なテーマで、日独の「架け橋」として仕事をしています。 ・ドイツ視察セミナー ・日独プロジェクトサポート ・日独異文化マネージメントトレーニング

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