【競争(competition)の本来の意味】

オリンピックがはじまった。

スポーツ選手たちの勝利を目指した「競争」に世界中が熱狂し、一喜一憂する。
「競争」は、スポーツだけでなく、私たちの経済活動、教育システム、文化・芸術活動と、あらゆるところにあり、個々人の生活や社会を動かす大きな原動力の1つになっている。

競争の語源について調べてみた。

日本語の「競争」は、明治時代に西洋から輸入された言葉。英語の「competition」を福沢諭吉が翻訳した。意味は「お互いが、競って優劣を争うこと」

では、そう日本語訳されたcompetitionの語源を遡るとどうだろうか?

「competition」は、ラテン語の「com-petere(一緒に探す)」に由来する。現代の「competition」が持つ「争う」という意味は全く含まれていない。

「競争」に該当するドイツ語「Konkurrenz」も、ラテン語由来だ。「con-curre(一緒に歩く)」。「対抗」し「競う」とは全く反対の意味だ。「協力」と意訳することもできる。

「com-petition」はいつの時代から「counter-petition」になったのか、「Kon-kurrenz」はなぜ「Kontra-kurrenz」になってしまったのか。

参照:C. Felber『Gemeinwohlökonomie (公共善エコノミー)』piper, 2018.

拙著『多様性』では、最終章にて、最新の脳神経学の知見から、人間の強みは「競争」ではなくて「協力」であり、進化の大きな原動力であることを書いた。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3

「com-petere(一緒に探す)」「con-curre(一緒に歩く)」という言葉を生み出した古代の人たちはおそらく、人間の強みを素直に受け入れ、理解していたのだろう。

人々がスポーツを観戦して感動するのは、選手やチームが「競争」で「勝った」から、「一番になった」からだろうか? 結果論的にはその側面が大きいかもしれないが、「競争」の過程で、「競争」の本来の意味である「協力」やソリューションを目指しての「協働」を感じるからではないだろうか?

オリンピックの「五輪」の意味として、宮崎日日新聞が、いくつかの説を紹介している。

一つは、地球の五大陸とその連帯。2つ目は、自然現象の水、砂、土、木、火。さらには、スポーツの5大原則の水分、技術、体力、栄養、情熱。これらがワールド「W」の形に並べられている。
https://www.the-miyanichi.co.jp/kuroshio/_54205.html

ただし、この新聞記事にはオチがある。記者はこう結んでいる:
五輪マークの「W」を上下ひっくり返すと「M」。「マネー」の頭文字に見えて困っている。

投稿者: Noriaki Ikeda

日独森林環境コンサルタント 南西ドイツを拠点に、地域創生に関わる様々なテーマで、日独の「架け橋」として仕事をしています。 ・ドイツ視察セミナー ・日独プロジェクトサポート ・日独異文化マネージメントトレーニング

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