「となりのパラダイス」は、サバンナと密林だった!

今、ドイツの著名な哲学・神学者でベストセラー作家ヨハネス・ハルトルの新刊『エデン・カルチャー』を読み始めました。「人間らしさ」に希望を託した未来のビジョンが書かれた本です。SDGsでは主に、人間が地球に与えるインパクト「人間のエコロジー」がテーマになっていますが、ハルトルは、人間のエコロジーを超える「心のエコロジー」を提唱しています。心のエコロジーは機械にはない「人間らしさ」で、1)結びつき、2)意義 3)美意識から成り、それは、彼によれば、身近にもある「楽園(エデン)」に存在するものです。

序章で、「エデン(=パラダイス)」の記述があります。現代人の大半が頭に描くパラダイズは、草原に樹木がまばらに立っていて、川や湖がある風景だそうです。田園風景もこれに近いものです。人間のこの「好み」は、人類ホモ・サピエンスが誕生し、長い間、生活していたアフリカのサバンナの風景から来ている、という説が紹介されています。

夕方、その箇所を読んだ後、マウンテンバイクで外へ出かけました。私が「身近なパラダイス」と呼んでいる、すぐ「となり」にある牧歌的な風景の中へ。住民だけでなく、たくさんの来訪者の心を和ませるシュヴァルツヴァルトの里山景観です。拙著『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』の4章に記述しています。
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開けた谷間の坂道を登りながら、ここにサバンナの要素があることに、はじめて気付きました。緑の牧草地とそこにまばらに点在する果樹です。牧草地の上に被さるようにして森もあります。人類の遠い祖先は、サバンナに出てくる前は、密林の樹上で長い間、生活していました。だから、森林の中の風景も、おそらく、人間の遠い記憶の中に刻まれている楽園であって、いくつかの書籍では、それが森林浴の精神医学的効果の一つの要因として挙げられています。

街の郊外の住宅地に住む私たち家族が、徒歩5分、自転車だと1分でたどり着ける「となりのパラダイス」は、人類の遠い記憶に刻まれている「サバンナ」と「密林」という2つのタイプの楽園が並存している、とても贅沢なところなんだと、認識を改めました。

田んぼと畑と草地と森からなる日本の田舎の里山景観も、人間の生活文化が造った、類似の贅沢なパラダイスですよね。人々の、自然と調和した生活があって初めて維持される文化景観であることも、同じです。

投稿者: Noriaki Ikeda

日独森林環境コンサルタント 南西ドイツを拠点に、地域創生に関わる様々なテーマで、日独の「架け橋」として仕事をしています。 ・ドイツ視察セミナー ・日独プロジェクトサポート ・日独異文化マネージメントトレーニング

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