いいえ、おそらくホモ・サピエンスが誕生する何千万年も前から、森林には、インターネットと類似のシステムがありました。ここ20年あまりの自然科学の研究で、その概要が解り始めています。
システムの名称は【Wood Wide Web】
生きている場所から移動できない樹木や植物は、キノコ(菌類)が土壌の中に張り巡らす菌糸のネットワーク(=光回線)を通して家族や親類、隣近所や仲間、競合やその他の生物たちと「交信」しています。
どれだけ密な回線網かというと、ティースプーン一杯の土のなかに数kmの菌糸網。樹木は根の先端(=ルーター)でこの光回線と接続しています。そして根は、樹皮の裏にある師管と導管(=LANケーブル)を通して樹木のソーラーパネルである葉っぱと結びついています。菌は樹木に、その時々の樹木の需要に合わせて、樹木が欲しいミネラル分のミックスを、土壌中からフィルタリング(調理)して与えます。その代償として、樹木は、ソーラーパネルで生産した糖分を菌に与えます。同じ目線のパートナーシップ。
菌糸網は、母樹が幼児や弱った仲間に養分を分け与える使者の役割も果たしています。また、樹木たちが共同で水不足や気候変動への対策を練るオンラインの戦略会議(=Zoom会議?)をするための、そして決めたことを迅速に共同で実践するための、安定した強固なコミュニケーションインフラでもあります。
樹木は、土壌だけでなく、空気を通しても、仲間や他の動物と交信しています。このWifiの信号の中身は数百種類あるフェロモンです。自分がキクイムシにやられたら、恥も外聞もプライドもなく、仲間に「俺は今やられた。おまえたち、気をつけろ。早く樹脂を生産して防御せよ」と迅速に信号を送ります。また、毛虫などの害虫にやられ始めると、それを食べてくれる鳥や昆虫に、ここに美味しい餌があるよ、とターゲットを絞った効果的な広告宣伝をし集客します。
このシステムWood Wide Webの使用料金や広告宣伝料金はありません。どのプレイヤーもそれで一儲けしようなどとは考えません。与えてもらったら返す、Gibe & Takeの原則で数千万年維持されています。