森の幼稚園

立派な園舎も作り置きの遊具もない
あるのは避難所/物置としての掘っ建て小屋と、森にあるもので遊びを考える子供達の想像力

遊戯室もステレオもない
あるのは木登り・土手登り・沢登りと、森の中に響き溶け込んでいく子供達の歌声、先生のギター伴奏

トイレも冷暖房もない
あるのは自然の中で自然と共に生きるトレーニングと、焚き火の周りに集まる微笑み

水道も石鹸も湯沸かし器もない
あるのは森から授かった子供達の高い免疫力と、吐く息が白い零下の冬の森のなかで飲む魔法瓶のハーブティ

毎日決まったプログラムも朝礼もない
あるのは季節と天気とその日の気分に合わせて選べる森の多彩な遊び場のレパートリーと、子供たちの意思や好奇心を尊重する先生たち

網戸も蚊取り線香もない
あるのは長袖・長ズボン・帽子、スカーフの防護をしてても防げない額やほっぺの虫刺されと、家に帰ると親が子供を裸にして行うダニチェック

おしゃれな格好は必要ない、意味がない
あるのは毎日泥だらけの中古の服と靴と、それを洗わずに日光や暖房ラジエーターで乾かして泥だけさっと払って次の日子供に着せる親たち

年齢別の組も園長先生もない
あるのは大きい子が小さい子を助ける自然な行為と、親たちが組織する民主的な理事会

運営のお金も乏しく管理人もいない
あるのは定期的にお祭りをして楽しく資金を稼ぐ文化と、親たちで持ち回りの週末の掘っ建て小屋掃除

こんな変わった幼稚園に子供3人を通わせてもらいました。親にとっても楽しく、学びの多い10年間でした。

約30年前に北ドイツの2人の先生が始めたオルタナティブな幼稚園、その教育界の「異端児」がドイツで現在約2000軒にまで増え、確固たる地位を築き、社会的に広く認知されるに至っています。

投稿者: Noriaki Ikeda

日独森林環境コンサルタント 南西ドイツを拠点に、地域創生に関わる様々なテーマで、日独の「架け橋」として仕事をしています。 ・ドイツ視察セミナー ・日独プロジェクトサポート ・日独異文化マネージメントトレーニング

コメントを残す