オンラインセミナーの案内

【集約版:国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】

8月31日(月)

https://sustainable-greeninfra-wald-boden1.peatix.com

9月1日(土)

https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

森と土は、多大で多面的な恩恵みを人間に与えています。その多種多様な恩恵のなかで、今日大きな意味を持ってきているのが、災害や気候変動を防止抑制する機能、すなわち人の命と健康と財産を守ってくれる「国土保全機能」です。

人間は太古の昔から、森と土の恵みである木材や動植物を利用してきましたが、その利用手法や実態は、残念ながら、過去においても、現在においても、森や土の「国土保全機能」を低下させるものがほとんどです。一方で、森や土の国土保全機能を維持もしくは向上させる持続可能な森林業や農業の手法や実践もあります。

このテーマは、森も土も豊かであると同時に壊れやすい環境(雨が多い気候や地質・地理条件)にあり、人口密度が高い日本においてとりわけ重要です。

本セミナーでは、国土保全機能の中の「洪水防止・抑制」と「CO2固定」に焦点を当て、森や土がいかに大切か、科学的な研究データに基づいてわかりやすく話し、人間が生産活動をする際にどのような「気くばり」が必要かを明示します。

7月半ばから8月初めにかけて2回に渡って話したものを、1つのレクチャーに集約したものです。前回好評でしたし、とりわけ日本にとって大切なテーマなので、再度「集約版」として提供します。聴き逃された方、ご興味がある方、お気軽にどうぞ!

森づくり、土づくりによる防災

7月に熊本の球磨川流域の洪水の映像を見て、「また熊本か」と同じ九州の長崎県出身者として心が痛みました。

ここ10年、森林の専門家として、とりわけ急峻で多雨の日本において、森林のマネージメント手法と洪水の因果関係を科学的に検証することを訴えてきました。

熊本は皆伐施業が多い地域で、洪水のあとネットで検索したところ、2007年の研究論文ですが、熊本県の皆伐の約7割が球磨川流域に集中している、というデータがありました。
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/…/60/bin090514192417009.pdf…

豊かな森林とそれによって生成される豊かな土壌は、健全な状態では多大な保水・貯水能力があります。皆伐は、その能力を、最悪の場合、長期にわたって大きく減少させるものです。皆伐だけでなく、鹿の食害の問題や、樹種構成、道路、コンクリート建造物など。様々な洪水の要因はあります。今回のような想像を超える集中豪雨では、健全で理想的な森林であっても災害を防ぐことはできなかったかもしれませんが、被害のスピードと規模をある程度抑制することはできたと思います。

未来のために、科学者、市民、企業、政治、行政が、真剣に取り組むべき課題です。

8月31日と9月5日に行うオンラインセミナーでは、このことをメインに話します。世界共通の課題ですが、とりわけ日本にとって大切なテーマです。

【集約版:国土を守るグリーンインフラ「森林」と「土壌」】
8月31日(月)
https://sustainable-greeninfra-wald-boden1.peatix.com
9月5日(土)
https://sustainable-greeninfra-wald-boden2.peatix.com

写真は、1828年にヨーロッパで出版された、皆伐と災害の因果関係を分析し論じている学術論文の表紙です。古書ですが、先月、バイエルン州立図書館のHPから電子データで全ページ無料でダウンロードして入手しました。

室内のオーバーヒートをさせないローテクの対策

通常冷房はいらない南独の地域ですが、ここ数年は、日中30度を超え、夜も22度くらいにしか気温が下がらない日が多くなっています。

斜面に立つ我が家は、一階が半地下で楚石造で蓄熱性能が高いので、外がムンムンした熱気でもひんやりして過ごし易いのですが、台所と居間と寝室がある生活の中心の2階は薄い断熱材入りの50年前の軽量木造軸組で、気を付けないとオーバーヒートしてしまいます。

暑い日の対策は、日中は太陽が当たる面の窓を閉めて、シャッターを下して、太陽の放射も熱気も入れないようにして、換気は北側の窓で必要最低限やります。

夜と朝方に冷えた時に一気に窓を開けて冷気を取り込み、室内の空気と壁や床を冷やします。


今回発見したのは、日中でも、北側の地面に埋まっている半地下部分の採光窓を全開にすると、冷気が入ってきて涼しいこと。その冷気を扇風機を上向きに回して階段から2階にあげると2階の空間の冷却効果があるということ。ローテクの原始的方法ですが。昨日扇風機を電気屋で買って今日試しました。


将来的には、2階のフローリングを厚さ3センチくらいの分厚い無垢の木のものにして、壁や天井に粘土ボードを貼り付けてやることを計画しています。蓄熱性能と調湿性能と匂い中和の性能もあるマテリアルなので、暑さ対策になり、暖房費を抑えることにもなり、湿度を安定させることにも繋がり、調理の匂いを中和させる効果もあるので。さらに防菌効果もあります。

潮浴の休暇でバイオリズムを感じる

年に一回は潮風にあたりたくなる。

毎日気軽に「森林浴」が楽しめる風光明美な場所に住んでいますが、唯一足りないのが海。北の北海やバルト海、もしくは南の地中海まで、それぞれ600km以上。日帰りでは行けない距離。私は佐世保近郊の漁業の町で育ったのでどうしても海の匂いが恋しくなります。海辺で夏のバカンス(潮浴)は、ここ数年家族の恒例行事に。

今年はコロナで半分諦めかけていましたが、国境が開放されたので南フランスに。あまりゴミゴミしていない生活感のある田舎の村の民泊アパートメントに泊まって、のんびりバイオリズムに沿って過ごしています。鳥の泣き声で起きて近所のパン屋の小さな行列ににマスクをして並び、焼き立てのクロアッサンを買って朝食、午前中海に出かけ、お昼に宿に戻り昼食を作って食べ、昼寝、散歩、釣り、涼しくなる夜9時くらいに冷えたワインと軽めの遅い夕食、きれいに剪定されたプラタナスの木々がある村の教会前広場では、近所の子供たちと小鳥たちが夜11時くらいまで寝る前のひと騒ぎ。騒ぎが静まったところで、ソファーで横になり本を読んでいるうちに自然に目が閉じて寝る。

Withコロナから Beyond コロナの予感

コロナと「共に」の世界に生きて半年たちました。

当初はショックや動揺や不安があり、現在でもありますが、一方で、これまで変わらなかったものが変わる、すでに過去に始まっていた持続可能なムーブメントが加速される、新しいものが生まれる兆候を感じています。

例えば私の身近なところでは:

1)握手も抱擁も接近もしなくなりフィジカルディスタンスは大きくなりましたが、人と人との心の距離は接近し、人を思う暖かい配慮の心は拡大したと感じられる部分がたくさんあります。本来の意味でのソーシャルディスタンスは縮まりました。

2)アグレッシブで有名なドイツの人々の車の運転が、少しだけ穏やかになったような気がします。

3)1日平均人口の5分の1が日常的な森林浴(散歩や瞑想やスポーツ)をしていたところで(ドイツBW州の統計調査)、コロナ後は、その森林訪問人口が倍増しているようです。私の近所の森でも感じられますし、フライブルク市の森林官の実感では、以前の5倍や10倍という推定も。

4)ホームオフィスやフレキシブルな勤務、家庭と仕事の両立のムーブメントが加速。日本においても、一部の人たちの間で、それを推進する動きがあるようです。

5)地域の食材、安全でエコな食材、地域の生産者への市民の意識は高まっています。以前から人気や知名度があった地域の農家の直売店やエコ食品の加工業者は、需要に追いつけないようです。

6)フライデーフォーフューチャーによって高まっていた環境やエネルギー問題への意識も、衰えてはいない気がします(世論調査の結果を待ちます)。

7)ソフトな観光が加速。国内で、近くで、質の高い観光、保養を、今年はより多くの人々が求めています。シュヴァルツヴァルトの農家民宿や民泊アパートメントは、かなり埋まっている模様です。我が家の小さな民泊アパートも5月末に解禁以来、予約が立て続けに入り、9月末まで空きがほとんどない状況。

8)地域の電気屋さんや大工さん、窓屋さんや暖房水道設備屋さんなどの優秀な手工業の会社は、かえってコロナで仕事が増えたような感じです。「コロナのおかげでや静かになって時間ができた」とレストランやホテルの改装や模様替えを敢行しているシュヴァルツヴァルトの家族経営企業や中小企業など(これまで堅実な経営をして資金的余裕がある企業です)、地域の手工業の会社にたくさん依頼しているようです。私の家の小さな仕事には、窓屋さんや電気屋さんは忙しくてなかなか来てくれません。

9)日曜大工、ガーデニングがますます増えています。ホームセンターの売り上げは増えているはず(統計資料が出たら確認したい)。ただし、怪我や事故に注意!ドイツでは、交通事故の何倍もの死傷者が日曜大工で出ています。

もちろん、他方では、メディアで取り上げられているような、深刻な社会経済問題があり、苦しみ、絶望している人たちがいます。でも私は、あまり強調されない、メディアで取り上げられない、身近なポジティブなこと、個々人の心の変化を伝えたいと思います。未来は、視野の狭い左脳偏重の専門家が「予測」したものが前方から襲ってくるものではなく、一人一人の意識と行動が作っていくものだからです。歴史はそうやって作られてきています。

私自身は、これまでフィジカルコンタクト(お客さんと対面してのコミュニケーション)を主体にドイツで日本で仕事をしてきましたので、今回のコロナは大きな変化です。でも、コロナが与えてくれた時間と心の自由を、今までやりたくてやれなかったことを実行することに使って有意義に過ごしています。正直経済的な不安はありますが、何か新しいことが生まれそうな、起こりそうな予感がしています。

ドイツで大豆の栽培と品種改良

ドイツでの豆腐製造のための大豆の栽培、品種改良について記事を書きました。
フライブルクで30年以上BIOの豆腐を製造している豆腐のパイオニア企業Taifun社の、農家や大学と共同する画期的な取り組みです。世界の大豆栽培の8割が遺伝子組み換え、同じく8割の大豆が、豆腐の5倍も効率が悪い肉の生産に使用され、南米の貴重な熱帯雨林などが焼かれている問題に対する、1企業の奇抜で画期的な取り組み、持続可能な社会の構築に向けた行動を紹介しています。

記事はこちらから
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/learn/585

多機能森林業の基礎を築いた人

19世紀初頭に、ドイツ森林学のパイオニアの1人、ヴィルヘルム・ファイルという偉人が、生徒たち(森林官の卵)に次のようなことを言っています:

「木にどう育てられたいか聞きなさい。本を読むよりよっぽどいいことをお前たちに教えてくれるはず」

「すべての理論はグレー、森と経験だけがグリーン」

プロイセンのエーバースバルデ林業大学の初代学長を務めたファイル氏は根っからの実践家、現場の人間でした。トウヒやマツなど成長のいい樹種を一斉に植えて土地から最大収益を得る視野の狭い畑作的林業の風潮が強まっていたなか、土地に合った樹種を育てること、机上の理論より現場の観察や経験がより大事であること、林業経営という狭い視野から脱して森林の国民経済と社会生活への寄与を考える必要があること、などを訴え教え、現在の「多機能森林業」の基礎の一つを築いた人です。

私も現場が好きで、普段はドイツや日本でのワークショップやセミナーでも、できるだけ参加者が森林を五感で体験できるようにオーガナイズしています。

しかし今年のコロナ情勢、それができませんので、春からオンラインセミナーを始めました。5/6月に第一走を好評にて終え、7月19日から第二走を開始します(8月半ばまで)。

緑いっぱいの生命の力が溢れた夏の森林での生の体験は提供できませんが、オンラインにて、その息吹を、包容力を、森林に携わる人たちのスピリットをお伝えできればと思っております。

森の幼稚園

立派な園舎も作り置きの遊具もない
あるのは避難所/物置としての掘っ建て小屋と、森にあるもので遊びを考える子供達の想像力

遊戯室もステレオもない
あるのは木登り・土手登り・沢登りと、森の中に響き溶け込んでいく子供達の歌声、先生のギター伴奏

トイレも冷暖房もない
あるのは自然の中で自然と共に生きるトレーニングと、焚き火の周りに集まる微笑み

水道も石鹸も湯沸かし器もない
あるのは森から授かった子供達の高い免疫力と、吐く息が白い零下の冬の森のなかで飲む魔法瓶のハーブティ

毎日決まったプログラムも朝礼もない
あるのは季節と天気とその日の気分に合わせて選べる森の多彩な遊び場のレパートリーと、子供たちの意思や好奇心を尊重する先生たち

網戸も蚊取り線香もない
あるのは長袖・長ズボン・帽子、スカーフの防護をしてても防げない額やほっぺの虫刺されと、家に帰ると親が子供を裸にして行うダニチェック

おしゃれな格好は必要ない、意味がない
あるのは毎日泥だらけの中古の服と靴と、それを洗わずに日光や暖房ラジエーターで乾かして泥だけさっと払って次の日子供に着せる親たち

年齢別の組も園長先生もない
あるのは大きい子が小さい子を助ける自然な行為と、親たちが組織する民主的な理事会

運営のお金も乏しく管理人もいない
あるのは定期的にお祭りをして楽しく資金を稼ぐ文化と、親たちで持ち回りの週末の掘っ建て小屋掃除

こんな変わった幼稚園に子供3人を通わせてもらいました。親にとっても楽しく、学びの多い10年間でした。

約30年前に北ドイツの2人の先生が始めたオルタナティブな幼稚園、その教育界の「異端児」がドイツで現在約2000軒にまで増え、確固たる地位を築き、社会的に広く認知されるに至っています。

複合的に考え、多面的にバランスの取れたソリューション

20年前、私は岩手大学でドイツ文学をかじったあと、ドイツのフライブルク大学で「森林学」を学びました。森林官(フォレスター)を養成するカリキュラムです。経営学、政治学、法律、歴史、地質、土壌、地理学、気象学、化学、生物、生態学、狩猟学、樹木生理学、造林学、樹木計測、統計学、木材利用学、人間作業工学、木材工学、森林土木、環境教育、ランドスケープ学、自然倫理、、、と「多様性」ある内容を5年半みっちり実学重視で学びました。当時は講義とセミナーは全て1週間から2週間のブロック(集中講義)形式で、ハードでしたがフィールド学習が多く楽しく学べました。

複合的に物事を捉え、多面的にバランスの取れたソリューションを考え実践するトレーニングを受けました。これは私の大きな財産で、現在の活動のベースになっています。いろんな分野の専門家と専門用語で話せることも「多様性」ある森林学を学んだことの大きな利点です。

私はなりませんでしたが、森林官(フォレスター)は、ドイツの子供達の憧れの職業の一つ。森林官にとって大切な仕事は、森を「クリエイト」すること。その中心的な作業は「選木」です。残す木、切る木を選ぶ作業ですが、この作業で将来の森の方向づけ、価値創出をしていきます。選木作業では、森林官の頭のCPUは、樹木生理、生態バランス、自然保護、防災、作業手法、木材産業の需要、売値、作業コスト、など多面的な知識と経験が複合的に高速でフル稼働し絡み合い、同じものは一つとない一つ一つのソリューションを導き出していきます。

ワイン畑 -草との付き合い いろいろ

先日、バーデンワインの産地の一つカイザーシュトゥール地域の段々畑のワイン畑を家族で散歩しました。

春先から初夏にかけては植物の成長期で、草は、ブドウの木と競合関係にあります。土壌中の限られた水分と栄養分を求めた競争です。ただし草は、マメ科など根粒菌の働きで空気中の窒素を土壌でアンモニア態に変換固定する「緑肥」としての役割や、草の根が土壌の構造と生物多様性を豊かにし、土壌を「活性化」させ、「虫や菌の害を抑制」し、土壌の「保水能力」を高める機能もあり、大切なパートナーでもあります。

草との付き合い方、草の扱い方で、ワイン農家の哲学やコンセプトや慣習が見て取れます。ちょっと歩いただけで、多種多様なやり方に出会い、たくさんカメラに収めました。

除草剤を使って全てもしくはぶどうの木の根元の部分だけ草を枯らしている畑(以前は一般的だったやり方)。耕して雑草を根こそぎ除去を全面もしくは木の根元だけやっている畑。一列置きに草を残している畑。草もマメ科や麦科を人工的に生やしている畑、もしくは自然の草をそのまま生やしている畑。

エコの考えをもった、もしくは認証を取っている農家は、除草剤は使わず、耕して根っこごと除去することもあまりせず、草の役割と機能を活かした形で、草との競合関係を、ブドウに有利なように地表面の部分的な草刈りをメインに「調整」しています。

ここ数年、農家は、春先から夏にかけて、雨が少なく水不足に悩んでいますが、草と「共に」土壌をしっかり作っているエコワイン農家で、水不足の被害が少なく、他の畑よりブドウが元気であることが観察されています